羽生結弦の「SEIMEI」に見る、フィギュア選手の再演が意味する「挑戦」とは
選手はいかにして選ぶのか? 曲は「養成ギプス」の役割を果たすことも…
1つ目はすべて自分で決める、2つ目は振付師と共同で決める、3つ目は振付師が決める、だ。
「3つ目の場合は先生が3、4曲を持ってきてくれてその中から選ぶことが多い。『君にすごく合っているから』と1曲だけを持ってこられることも稀にあります」という。
果たして、どのパターンが理想的なのか。小塚氏は自身の体験をもとに持論を語る。
「自分で音楽を決めると、自分のやりたいジャンルが偏りがちになります。その先を見越し、成長するために何をすべきか、客観的に見てもらった方が、良いと考えていた。なので、自分は試合で使用する曲はなるべく自分に足りなところを振付師と話し、音楽も決めてもらうようにしていました。その結果、メジャーな曲は少なく、みんなが知らないような曲を自分の曲にしていくことが多かったです」
曲選びで重要となる客観性。一般的には2、3つ目の例が多いという。
「筋トレと一緒です。なぜ、筋トレにトレーナーをつけるかと言えば、自分でどれだけメニューを考え、自分の中で120%のパフォーマンスをしているつもりでも、それは自身で考えているものだから100%。だからこそ、トレーナーにメニューを作ってもらい、決めていくことによって、自分にはないマインドや可能性が広がってくる。“養成ギプス”のような役割をも果たすこともあります」
スケーターにとって、自らを高めてくれる演技曲。羽生は再演を決断し、多くの選手が運命の五輪シーズンに勝負をかけて選曲している。リンクに奏でられる音色は、選手の戦う覚悟の響きでもある。
【了】
ジ・アンサー編集部●文 text by The Answer