日本の競技人口は1人 「気絶」の恐怖と闘うクレージーな男、荒田恭兵が高さ27mから飛び込む理由
五輪種目になる可能性も「飛込で叶わなかった夢が叶うかも」
少しでも競技の魅力を広め、ともに戦うメンバーが増えてほしい。だが、安易な勧誘はしない。
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「今は勧誘する状況ではないと思っています。自分の経験が浅いし、確固としたルートを築いていくところ。自分はたまたま27メートルができちゃったんですけど、みんながみんなそうではない。ちょっとずつやっていく必要があります。だから、自分が経験を伝えて導いていきたい。まずは自分以外でも『挑戦したい』と思える環境にしないといけない。正しい印象を持って広まってほしいです、この競技がどういうものか知って、そこから応援するかどうか決めてほしい」
身震いしてしまうクレイジーな挑戦。今大会前にはTBS系「クレイジージャーニー」で特集を組まれ、一躍注目の的となった。「反響はとんでもないです。いろんな人から『見てるよー!』ってメッセージをいただいた。それだけの注目に恥じない演技をしないといけない」。今大会中も外食に行くと、店員から「荒田さんですよね?」。最近になって10社近いスポンサーの依頼も届いた。
身を取り巻く環境の激変ぶりに「ありがたい」と連呼する。
「恐ろしさを感じつつ、ありがたいです。ずっとSNSで発信してきたけど、一人じゃ伝えきれないものがあるんです。こうやってメディアに伝えてもらえてありがたいです。(応援のおかげで)モチベーションが上がる頻度が多い。浮かれてはいないけど、正直、今も顔がニヤけています(笑)。本当にありがたいです」
世界水泳でも会場設営の負担で実施されない年があるが、五輪種目になるように働きかけられている最中。来年パリ五輪はオープン競技になるという。「飛込で叶わなかった五輪選手になるという夢が叶うかもしれない」。孤独でひたむきな挑戦を続けたことで、巡ってくるチャンス。8月2、3日には宮崎の観光名所・高千穂峡で「レッドブル・クリフダイビング」のツアー第4戦が行われる。
日差しを真正面から受けた炎天下の取材。競技直後にしては長い20分を超え、打ち切ろうとした係員を制止した。「もうないですか?」と質問がなくなるまで応じる姿に、競技と自分を支えてくれる人への想いが溢れていた。
十分な練習環境もない。指導者もいない。競技だけでは生計も立てられない。でも、ロマンと何にも代えがたい感情が胸にある。
「準備を積み重ねた結果、恐怖心を乗り越えて成功した瞬間は何よりも爽快感を得られるし、生きてるって感じられる。なかなか日本で練習できないけど、もっと27メートル以上も経験して、もっと突き詰めたいです。自分で限界は定めていないし、ダメだと思った時が限界。それまでは続けたい。もう10年はやりたいですね」
まさにクレイジー。やりたい人は少ないが、見る分には大興奮する人も多いのではないか。そんな魅力あふれるハイダイビングに挑む男・荒田恭兵。自分にしかできない道を切り拓くため、今日も飛ぶ。
(THE ANSWER編集部・浜田 洋平 / Yohei Hamada)