【世界水泳】12歳で日本3位になった元スーパー中学生 22歳今井月が長期スランプから蘇るまで
水泳界の“世界一決定戦”世界水泳福岡(テレビ朝日系で中継)が7月14日に開幕した。2001年以来22年ぶりの日本開催となり、中でも注目を集めるのは競泳だ。個人種目で金メダルなら1年後のパリ五輪出場が内定する今大会。「THE ANSWER」では7月23日の競泳開幕30日前から「テレビ朝日×THE ANSWER」としてタッグを組み、様々な企画を実施してきた。
「世界水泳カウントダウン連載」競泳開幕まであと4日―女子200m平泳ぎ・今井月
水泳界の“世界一決定戦”世界水泳福岡(テレビ朝日系で中継)が7月14日に開幕した。2001年以来22年ぶりの日本開催となり、中でも注目を集めるのは競泳だ。個人種目で金メダルなら1年後のパリ五輪出場が内定する今大会。「THE ANSWER」では7月23日の競泳開幕30日前から「テレビ朝日×THE ANSWER」としてタッグを組み、様々な企画を実施してきた。
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その一つがカウントダウンでお送りする「ウルトラ連載」。出場選手のインタビューに加え、特別企画を織り交ぜながら大会を盛り上げる。19日の第30回は、女子200メートル平泳ぎに出場する今井月(るな・バローHD/東京ドームスポーツ)が登場。将来を期待された22歳は長いスランプを経て、6年ぶりに日本代表復帰を果たした。自己ベストを連発するまで蘇った背景には様々な苦労がある。
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止まっていた時計の針をグルグルと動かしている。4月の日本選手権200メートル平泳ぎ決勝。今井は最後50メートルで先頭に躍り出ると、ライバルたちの追い上げを振り切った。昨年8月に7年ぶりに出した自己ベストをさらに更新する2分22秒98を叩き出し、表彰台で満面のスマイル。取り戻した輝きは、より一層強く放たれた。
「凄く冷静にレース運びができた。レース自体は一瞬。ゾーンに入れていたんじゃないかな」
完全復活を印象付ける2連覇だ。17年世界水泳以来の代表復帰。昨年大会なら銀メダル相当のタイムだった。かつてスーパー中学生と呼ばれた22歳。苦難の道のりは長かった。
2013年、12歳の中学1年で日本選手権初出場。200メートル平泳ぎで3位に入った。高校1年で16年リオ五輪200メートル個人メドレーの準決勝に進出。17年も同種目で世界水泳5位に入った。メダル候補と期待された東京五輪。しかし、体の成長に伴う感覚のズレなどで伸び悩み、代表に入ることすらできなかった。
復活を目指していた21年6月、5歳から10年間水泳を学んだ本巣スイミングスクールの芝辻泰宏コーチが病で帰らぬ人(享年57)となった。小学4年から指導を受けていた今井。中学卒業後もスランプに陥った時、恩師のもとで泳ぎを見つめ直す時もあっただけに心痛だった。
「一番好きな種目の平泳ぎで日本代表に入るという目標をずっと叶えられていなかった。芝辻コーチもきっとそれを望んでいるし、応援してくれていたと思う」
21年10月、練習環境を変えて心機一転。過去の代表時代を知る飯塚正雄コーチの指導を受けた。肉体改造に着手し、上半身を生かしたテンポの速いストロークを習得。こだわりのある平泳ぎに絞り、22年日本選手権200メートルで初優勝するまでに復活した。
同8月には中学3年以来、7年ぶりの自己ベストを更新した。今年は24年パリ五輪に向け、世界での立ち位置を知りたい一年。世界水泳の代表権は是が非でもほしいところだった。
代表選考会を兼ねた4月の日本選手権。100メートルは泳ぎが噛み合わず、「200メートルはどうなっちゃうんだろう」と不安に襲われた。2日後の200メートル。朝のウォーミングアップでも感覚が合わない。「レースに行くのが怖かった」。芝辻コーチからもらったブレスレットを持参。父・博美さんもコーチの着ていたポロシャツに袖を通し、娘の大一番を見守った。
スタート台に立った今井。レース直前に腹をくくった。
「普通に泳いでダメだったら仕方ない」