ナプキンの漏れ、ズレ、気になった男子の目 部活中「トイレに行ってきます」が言いづらかった――元陸上オリンピック選手・室伏由佳さん
PMSがひどく体が言うことをきかない コーチである父にあたった選手時代
――それでも、処置をした3か月後にはハンマー投げで日本記録を樹立。アテネオリンピック出場も決めます。
「記録は出ましたが、実はポリープを切除した後、これで済んだと思っていた矢先に、今度は吐き気やむかつき、むくみといった、月経前の不調(PMS)がひどくなるという、別の悩みが表れ、生理前になると著しく練習や試合での記録が落ちるようになりました。トレーニングをして、調子を上げなければいけないのに、生理前になると体が言うことをきかなくなる。イライラしたりすごく不安になったりして、選手時代はコーチである父に、ずいぶん当たりました」
――具体的にはどんな風に競技に影響したのでしょうか?
「私の取り組んでいた円盤投げ・ハンマー投げは、かなり機敏な動きが求められました。例えば、つま先の底背屈を速やかに繰り返して地面反力を得ながら力を発揮しますが、生理中はどうしても下肢がむくんで機敏に動かず、動作のタイミングがずれてしまいます。
さらに、オリンピック後から腰痛症も悪化。仕方なくトレーニング量を半分にしていたこともあります。腰痛症でただでさえ練習計画はうまくいかないうえ、生理が訪れるタイミングで不調に陥り、追い込み時期に練習量を落とすこともありました。結果、練習で十分に能力を高められなかったり、大会に最大のピークを合わせたりが難しいことが多々ありましたね」
(後編へ続く)
【Profile】室伏 由佳 / Yuka Murofushi
順天堂大学スポーツ健康科学部・大学院スポーツ健康科学研究科准教授、スポーツ健康科学博士。女子円盤投げ・ハンマー投げの元日本記録保持者。1977年、静岡県沼津市生まれ。中学生時代から陸上競技を始める。女子ハンマー投げ日本代表として、2004年アテネオリンピック出場。2012年に競技を引退。アンチ・ドーピング教育、スポーツ心理学、痩せた若い女性の健康課題に関する研究課題を研究するとともに、スポーツと医学、健康などをテーマに講演や実技指導など幅広く活動している。また、婦人科疾患を経験し、選手時代から女性アスリートの健康課題に関する啓発活動に携わる。
(THE ANSWER編集部)