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肌が青白く、潤いがない他校の女子「衝撃だった」 違和感から変わった陸上・田中希実の食事管理

「食事は楽しむもの」と中高生にアドバイスを送る田中【写真:荒川祐史】
「食事は楽しむもの」と中高生にアドバイスを送る田中【写真:荒川祐史】

中高生へ「人間としての“当たり前”を抑え込む方が不自然」

 海外遠征では、ホテルのビュッフェでお腹も心も満たす。「どれにしようかな」と考える時間がとにかく楽しい。「ケニア合宿に来たからにはこれを食べないと」なんて笑いながら、チャパティとマンダジ(揚げパン)にかじりつく。

 実はスイーツ好き、とりわけシュークリームが好物。食べすぎはよくない。油も、小麦も、卵も、品質に気を配っている。

「あえて我慢せずに練習後のご褒美に。チョコを1つ、アイスを1つとか。ご褒美を用意している方がモチベーションになる。『油だからいけない』ということではないです」

 今は「食事は楽しむもの」と声を大にする。それが心の栄養になるのだ。

「美味しいお店がどこにあるのか調べることも含め、発見が増えます。それに付随して食べることがどんどん好きになったり、どこの土地に行っても何が美味しいのかなって調べるのが楽しくなったり。だから、海外遠征と食事がセットになり始めてから、食事はより好きになりましたね」

 体重コントロールに過敏になってしまう中高生へ、アドバイスをくれた。

「小、中、高は成長期なので、体重が増えやすいのは仕方ないです。人間として普通に成長する過程で当たり前にあることを抑え込む方が不自然。それは将来的に良くないし、人として当たり前に楽しむという経験ができないのと一緒です。勝つために何かをやるのはとても大切ですが、勝つことが全てになってしまう。

 勝てない時が続いたら何のために我慢していたのか、そもそも何のために競技をしているのか、生きている意味も問われてきてしまいます。それなら普通に走っている時間、食べている時間そのものを大事にした方がいいんじゃないかな。競技はストレスが多い。練習が嫌、うまくいかない、ストレスがかかるのがアスリート。その中でわずかでもリフレッシュできることを探す。

 一日の中で必ず訪れる時間が食事です。日常に彩りを増やすし、世界も広がる。食事と文化は直結しているので、どこに行っても人生を楽しめます。それが私にとっての心の栄養です」

 コーチの父・健智さんと二人三脚で世界と戦ってきた。選手を見守る親、指導者に対しても、そっと投げかける。

「選手目線では、やっぱりチクチク言われて管理されることがストレスになります。ある程度の競技力のある選手は意識していることが絶対にあるし、大なり小なり勝ちたいという気持ちはあります。それに即して何かしら行動をしているので、それは監督やコーチの物差しで測れるものではありません。

 失敗したら失敗したでその選手にしかわからないこと、経験して初めてわかることがあります。将来がわかる指導者の目線だと、『こうなったらこうなる』という答えを持っている。だから、近道として失敗しないように囲い込みたくなる気持ちもわかります。まずは失敗しないようにすることが仕事だと思われるかもしれません。

 でも、選手も自分で失敗しないとわからない。見守ることが一番大事。『相談があればいつでも受けてあげるよ』というスタンスだと嬉しいですね」

■田中 希実 / Nozomi Tanaka

 1999年9月4日、兵庫・小野市生まれ。ランニングイベントの企画・運営をする父、市民ランナーの母に影響を受け、幼い頃から走ることが身近にある環境で育った。中学から本格的に陸上を始め、兵庫・西脇工高に進学。同志社大を経て、豊田自動織機へ。2023年4月からNew Balance所属となり、プロ転向した。東京五輪は1500メートルで日本人初の8位に入賞するなど、複数種目で日本記録を保持する。趣味は読書。好きな本のジャンルは児童文学。とりわけ現実世界に不思議が入り混じった「エブリデイ・マジック」が大好物。THE ANSWERにて自筆コラム「田中希実の考えごと」を連載中。

(THE ANSWER編集部・浜田 洋平 / Yohei Hamada)


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