SNSに流れる「あの子、太ったね」傷つく女子選手 鈴木明子が警鐘鳴らすフィギュア界の新たな課題
シニアの年齢引き上げで競技環境に変化
とりわけ、フィギュアスケート界の課題だったのは選手寿命。体の軽さを武器に高難度のジャンプを連発し、15~16歳の選手が活躍する一方、体型変化が起こると跳べなくなり、10代後半に苦しみ、引退に追い込まれる例が多い。月経不順や摂食障害などの健康障害もある。2024-25年シーズンからシニアに上がる年齢を従来の15歳から17歳に引き上げるルール改正が決定。鈴木さんは「競技をトータルパッケージで考えられるようになり、指導者も変わって来る」とポジティブに受け止めている。
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「17歳であれば通常は初経を迎え、体も大人になり始めている段階。指導者もジャンプだけを教え込むのではなく、シニアになっても活躍できるように基礎を大切にする。健康という意味でもすごく良いこと。スポーツはどんどん技術を上げることが正解という意見もありますが、技術と芸術のバランスがフィギュアスケートの美しさだと私は思います。選手もジャンプが跳べないからもうダメなんだと諦めるのではなく、自分の武器や個性を磨いて、選手生活を楽しむことができたらいいですね」
もちろん、課題がないわけではない。ひとつ、懸念されるのはフィギュアスケートの女子選手に対する体型へのSNSの反応。ファンが悪気なく、「あの選手、太ったね」などと投稿したことが、選手の目に留まる。まだ精神的に未成熟な10代が活躍するフィギュアスケートは、他のスポーツに比べて、選手のメンタルに影響を及ぼす可能性がある。鈴木さんも「特に若い選手は真正面から受け止めて傷ついてしまい、摂食障害につながる恐れもある。これは問題だと思っています」と危惧している。
多様性が叫ばれる時代。「体形も個性であっていい」というのが鈴木さんの考え。「体形のことは何より自分が一番分かっている。にもかかわらず、周りに言われてしまうと余計に影響が大きい。見ている方も選手を守るために軽はずみな弾みを控えてほしい」と願う一方で、選手たちに向けても「自己防衛も大切。不必要な声に触れないよう、見なくてもいい。SNSとの付き合い方もこの時代だからこそ必要」と諭した。鈴木さんのまなざしは、常にスポーツ環境のより良い未来に向けられている。
(THE ANSWER編集部・神原 英彰 / Hideaki Kanbara)