アイドル似と取り上げられ、DMで無数の誹謗中傷 SNSの投稿がニュースになる時代の選手のあり方――岩渕真奈×登坂絵莉「女性アスリートとメディア」
アスリートは「現役時代の自分が自分史上、一番カッコいい」
登坂「現役選手って、かっこいいもんね」
岩渕「うん。ホント、引退してそう感じるようになった。頑張っている人って、めちゃめちゃカッコいい。自分もそこにいたんだ、頑張っていたなと思う」
登坂「私も現役時代の自分が自分史上、一番カッコいいと思うもん。今見ても、Tシャツ・短パンの練習着姿の自分が一番好き」
岩渕「多分、現役生活以上に熱中できることは、今後ないよね。もう1回やりたいかと言われたら、辛すぎて全然やりたくないけれど(笑)」
登坂「スポーツはハッキリ結果が出るのがいいよね。勝ち負けがすべてではないけれど、目標を定め、勝ち行くなか、いい形で勝てれば正解、負ければそれまでのアプローチがダメだったとわかる。すると、次の目標も定めやすい」
岩渕「絵莉は真面目だね。自分は引退するまで、ただサッカーが好きでやっていただけの人間だから。でも、自分のMAXを出せなくなって、やめちゃった」
登坂「潔いな。そうだよね、真奈は本当にサッカーが好きなんだなって、一緒にいていつも思っていた」
岩渕「そう?」
登坂「うん。いつも言っていたよ。私はサッカーが好きだからって!」
(THE ANSWER的 国際女性ウィーク4日目は女子ゴルフ・有村智恵が登場)
【サッカー・岩渕真奈さんとレスリング・登坂絵莉さんの「人生で救われた、私のつながり」】
「私の人生の大半は、スポーツを通した様々な出会いで占められています。先日も2011年のワールドカップ優勝メンバーと集まる機会がありましたが、12年たっても、当時のことを思い出し、盛り上がれるような繋がりは、スポーツだからこそ得られたものだと感じます。同じ経験を共有してきたチームメート、チームスタッフ、そして応援してくれるたくさんの人たちなど、現役生活で得た人たちとの繋がりは、生涯、消えません。人間は一人では生きられない。人との繋がりは、私がサッカーで得られた財産です」(岩渕さん)
「私はリオ五輪で金メダルを獲った後、ケガをして手術をして、一気に勝てなくなりました。天国から地獄へと落ちたとき、『一緒に頑張ろう』と言ってくれた仲間たち、そして、SNSから心配や励ましの言葉を寄せてくれたたくさんの方がいたから、私は頑張ることができました。今回対談した岩渕真奈さんもリハビリ中に出会った友人。彼女のように、世界の様々な文化に触れてきた方の話は、勉強になることばかりです。引退後も私を成長させてくれる人たち、そしてこの先も長く人生に関わっているたくさんの友人に出会え、レスリングをやっていて本当によかったと感じています」(登坂さん)
※「THE ANSWER」では今回の企画に協力いただいた皆さんに「あなたが人生で救われたつながり」を聞き、発信しています。
■岩渕 真奈 / Mana Iwabuchi
1993年3月18日生まれ。東京都出身。2007年、14歳で日テレ・ベレーザ(現日テレ・東京ヴェルディベレーザ)の一員として、当時の国内トップリーグ、なでしこリーグに初出場。16歳でA代表デビューを飾り、11年の女子ワールドカップではチーム最年少の18歳で優勝に貢献した。2012年11月、ドイツ・女子ブンデスリーガのTSG1899ホッフェンハイムへ移籍。その後、FCバイエルン・ミュンヘン(ドイツ)―INAC神戸レオネッサ(日本)―アストン・ヴィラLFC(イングランド)を経て、2021年5月からイングランドのFA女子スーパーリーグのアーセナル・ウィメンFC、トッテナム・ホットスパーFCウィメンでプレー。2023年9月、現役引退を発表した。日本代表として女子ワールドカップは2011年(優勝)、2015年、2019年大会、五輪は2012年ロンドン大会、2021年東京大会に出場。
■登坂 絵莉 / Eri Tosaka
1993年8月30日生まれ。富山県出身。至学館大学大学院健康科学健康科修士課程修了。小学3年生の時、国体で優勝経験のある父の勧めでレスリングを始める。至学館大学進学後、2012年~15年に全日本選手権4連覇を達成。2013年~15年に世界選手権3連覇の戦績を残す。2016年、至学館大学大学院に進学。同時に、東新住建に入社し女子レスリング部に所属する。リオデジャネイロ五輪では決勝でロンドン五輪銀メダリストのマリヤ・スタドニク(アゼルバイジャン)と対戦。試合時間残り13秒で片足タックルを決めて3-2と逆転。金メダルに輝いた。プライベートでは2020年に結婚、2021年に男児を出産し1児の母に。2022年に現役を引退。現在、メディア出演、イベント出演、講演活動などに取り組み、レスリングの普及や引退後のアスリートのセカンドキャリアの選択肢を広げるべく活動する。
(長島 恭子 / Kyoko Nagashima)