「練習あるし、仕事あるし」で後回しにされる生理 Vリーグ・東レで実践されていた月経の決まり事――バレーボール・迫田さおり「女性アスリートと月経」
東レで実践されていた決まり事「全員が生理の日を記録に残す」
迫田さんが抱えていた唯一の生理の悩みが、痛みだった。月によって強弱の波はあるものの、重症化しないよう、鎮痛剤は手放せなかった。
「私の場合、環境の変化による影響を受けやすかったと思います。“ストレス”という言い方は好きではないのですが、合宿、遠征、大会など、環境が変化し、プレッシャーや不安が多いときは、生理痛が重くなる。そして痛みが起きてから薬を飲んでも、まったく効かないことがわかりました。
大事な大会にピークに持っていくときなども、長期間、気が張っている状態が長く続きます。代表活動が終わった後やオフシーズンなど、緊張のスイッチが切れると痛みが増しましたね」
生理中のコンディションをコントロールするうえで役立ったのが、記録だ。東レでは体調管理のため、全員が生理の日を記録に残す決まりがあった。小さな習慣だが記録を残すことによって、自分の体を知ることが出来たという。
「記録することで、どんな1か月だったか振り返れます。すると、生理に関する『何で?』という疑問の答え合わせが出来るんです。
大会や合宿があった、勝った、負けた、どんな練習内容だったか。私の場合、振り返るとメンタルの状態と生理の痛みの波がピタリと合った。苦しい状態が続いたから痛みが強かったんだなとか、リラックスして過ごせたから今月は順調だよねとか、記録が教えてくれました。
記録は生理と自分とのコミュニケーションツールというか。体との会話や、気づきに繋がります」
痛みと向き合ってきた経験から、生理痛に悩む女性にアドバイスが欲しいと伝えると、「痛みは当たり前ではないと思うこと。ガマンをしすぎないこと」と挙げた。
「私たちはどうしても、練習があるし、仕事があるしと、生理の問題を後回しにしがちです。また、生理の痛みは数日で治まるし、毎月のことだから、どうしても終わると忘れてしまう。
でも、生理痛や生理不順は体のSOS。恐らく、突然、体が悲鳴を上げたのではなく、予兆があります。だから、出来るだけ快適に過ごすには、早い段階で体のSOSに気づけることが一番だと思います」