「死ねって言葉よりきつかった」 生きる手段だった陸上、批判覚悟でセミヌードになった理由――パラ陸上・中西麻耶
「THE ANSWER」は3月8日の国際女性デーに合わせ、さまざまな女性アスリートとスポーツの課題にスポットを当てた「THE ANSWER的 国際女性ウィーク」を今年も展開。「スポーツに生きる、わたしたちの今までとこれから」をテーマに1日から8日までアスリートがインタビューに登場し、これまで彼女たちが抱えていた悩みやぶつかった壁を明かし、私たちの社会の未来に向けたメッセージを届ける。5日目は陸上でパラリンピック4大会に出場した中西麻耶(阪急交通社)が登場する。
THE ANSWER的 国際女性ウィーク5日目「女性アスリートとメイク」中西麻耶インタビュー前編
「THE ANSWER」は3月8日の国際女性デーに合わせ、さまざまな女性アスリートとスポーツの課題にスポットを当てた「THE ANSWER的 国際女性ウィーク」を今年も展開。「スポーツに生きる、わたしたちの今までとこれから」をテーマに1日から8日までアスリートがインタビューに登場し、これまで彼女たちが抱えていた悩みやぶつかった壁を明かし、私たちの社会の未来に向けたメッセージを届ける。5日目は陸上でパラリンピック4大会に出場した中西麻耶(阪急交通社)が登場する。
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今回のテーマは「女性アスリートとメイク」。スポーツ界にはこれまで女子選手がメイクやお洒落を楽しむことが批判される風潮があった。メイクにこだわってきた中西も、競技生活でバッシングを多く受けたという。前編では、24歳でメイクに興味を持ったきっかけを明かし、実際に批判された経験について吐露。2012年に話題となったセミヌードカレンダーの自費出版に踏み切り、一度は現役引退に至るまでの経緯を語った。(取材・文=長島 恭子)
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取材ルームの大きなシルバーの扉が開くと、バックパックを背負った小柄な女性がひょっこりと現れた。2008年北京大会から、4大会連続でパラリンピック出場する、女子陸上選手の中西麻耶だ。
中西の身長は158センチ。知ってはいたものの、テレビや写真で見る印象よりも、ずっと小柄で驚いた。
「それ、会う方に絶対、言われます。スポーツでは心理戦も大切。だから競技中は、自分を大きく見せられるようなヘアメイクを意識しています。海外の大きな選手にも、恐怖心はありますから、私のようなちっちゃい選手でも、強そう、大きく見える、と感じさせれば、相手はプレッシャーを感じると思うし。マウントですよ、マウント(笑)」
普段と試合の日では、髪型もメイクもガラリと変わる。普段は流行も取り入れつつ、「常に新しい自分を見つけている」。そして試合では「クールでかっこよく」が、コンセプト。「そう見えたほうが、『あ、この選手なんかしてくれるかも』という期待感が高まるかなって」
メイクに興味を持ち始めたのは、24歳になる2009年、練習の拠点をアメリカに移してからのことだった。五輪三段跳び金メダリストでもあった当時のコーチ、アル・ジョイナー氏の「女性としての人生を楽しむぐらいの余裕がなければ、お前は絶対に世界一になれない」という、言葉がきっかけだった。
「当時の日本は、競技者ならば24時間、365日、陸上のことばかり考えろ、という時代。私自身、ソフトテニスをやっていた青春時代もそんな感じで過ごしていたので、びっくりしました」
「ファッションやメイクは自分を表現する一つのツールであり、スポーツに向かう気分を作り上げる力もある。だから、女性として人生も楽しむことは、競技者としても大切だよ」。そう語るコーチの話を聞き、チームメートの姿を思い出した。
「彼女と初めてプライベートで出かけたとき、私服姿やお化粧品を選んでいるときのキャッキャした雰囲気など、練習中では見せない姿がすごく新鮮だったんです。それで、あぁ、私もちゃんと、お洒落も楽しみたいな、と思いました」