世界が認めるサッカー女性審判員・山下良美さん、「苦しい思い」の先に見た最も“感激した”光景
サッカーの国際審判員で、JFA(日本サッカー協会)とプロフェッショナルレフェリー契約を結ぶ山下良美さんが「THE ANSWER」のインタビューに応じた。2021年にJリーグ史上初の女性主審を務めると、22年カタール・ワールドカップ(W杯)では第4審判、23年アジアカップでは主審として男子の国際大会を担当。今夏行われるパリ五輪の審判員にも21年東京大会に続いて選出されるなど、活躍の場を広げている。数々の「女性初」の歴史を刻んできた山下さんに、審判員としてのキャリアを振り返ってもらいながら、世界に認められるレフェリングの裏にある想いに迫った。(取材・文=長島 恭子)
W杯や五輪の舞台を経験、今でも「審判よりプレーするほうが好き」
サッカーの国際審判員で、JFA(日本サッカー協会)とプロフェッショナルレフェリー契約を結ぶ山下良美さんが「THE ANSWER」のインタビューに応じた。2021年にJリーグ史上初の女性主審を務めると、22年カタール・ワールドカップ(W杯)では第4審判、23年アジアカップでは主審として男子の国際大会を担当。今夏行われるパリ五輪の審判員にも21年東京大会に続いて選出されるなど、活躍の場を広げている。数々の「女性初」の歴史を刻んできた山下さんに、審判員としてのキャリアを振り返ってもらいながら、世界に認められるレフェリングの裏にある想いに迫った。(取材・文=長島 恭子)
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4月3日、FIFA(国際サッカー連盟)はパリ五輪の担当審判員を発表した。日本から選ばれたのは主審・副審合わせて3人。そのうち主審として選出された国際審判員の山下良美さんは、2021年の東京大会に続く、2度目の五輪となる。
「審判員として何もできない状態からスタートしましたが、経験を積むほど、できることがどんどん増えていく。その達成感と向上心で、次の試合、次の試合と課題を一つひとつこなしていたら、今に至るという感じです」
4歳でサッカーを始め、女子チームのなかった小学生時代も、男子チームに混ざってプレーを続けた。教員を目指して大学に進学するも、「1日でも長くサッカーを続けたい」と、大学卒業後はクラブチームに加入。大学の非常勤職員として働きながら、選手生活を送った。
その後、選手から審判員へとキャリアの舵を切る。そして22年7月、JFAと女性審判員として初めてプロフェッショナルレフェリーの契約を結んだ。
「大学卒業後も選手を続けたのはトップリーグでプレーをしたいというよりも、上手くなることが嬉しかった。正直、サッカーは今でも、審判をするよりプレーするほうが好きです(笑)」
サッカーのシーズン中、山下さんの生活は毎週、試合の翌日から新たな1週間を迎える。フィジカルトレーニング、試合の振り返り。その後、次の担当ゲームのチームや選手の戦術や特徴、試合の傾向などを頭に入れ、試合当日を迎える。
トレーニングもハードだが、それ以上に試合の振り返りは「本当につらい作業」と言う。
「担当をした試合を振り返るまでが審判の責任。約2日間かけて自分の試合や他の試合の審判員の動きの分析を行いますが、振り返りでは自分へのダメ出しばかり。やっぱりへこみますし、映像を観る気持ちに持っていくのが難しく、時間がかかります」
審判員の振る舞いは一挙手一投足が説得力と信頼感につながると考え、ジェスチャーの仕方一つとっても、指先まで神経を傾けて行う。他の審判員からのアドバイスにも、すべて耳を傾け、吸収する。
「フィールドへの入り方から、ボールのピックアップの仕方、シグナルの際の手の位置など、すべてにおいてどのように行うのが適切かを考えます。
例えば入場の際、主審がうつむき加減で小股でちょこちょこと歩けば、悪い意味で目立ってしまう。時に他の審判員の立ち居振る舞いを参考にしながら、それこそ選手と並んだ際の立ち方や足の幅まで、いかにマイナスの印象を与えず、信頼感や説得力を上げるかを考えます」