五輪4度出場のママが37歳で学生に転身 アスリートの人生も「選択肢は一つじゃなくていい」――バレーボール・荒木絵里香
女性アスリートのライフプランに「もっと選択肢が増えていったら…」
女性アスリートのライフプランをテーマにしたインタビュー。「もっと彼女たちの選択肢が増えていったら……」というのが、荒木さんの未来への願いだ。
「アスリートをしながら大学に進学する、結婚する、出産する……何か一つを選ばなくても、いろんなことが並行してやることができる。その選択肢から、なりたい自分、ありたい自分をアスリート自身が決断できる仕組みであることがいいなと思います。
『MAN』も賛同アスリートが増えてきて、次の若い女性アスリートに対して、こんなライフプランもできると示す形作りを練っています。それは月経など女性の体の問題も全部が繋がっていく。そういうところも伝えていくような活動をしていきたいですね」
いわゆるデュアルキャリアを歩んできた荒木さん自身、一つの選択にとらわれないアスリートのロールモデルになるだろう。
今年で39歳になる。不惑という節目が目前。9歳の娘の子育て、大学院の研究、「MAN」の活動のほか、バレーボールの解説業、Vリーグ・トヨタ車体クインシーズのチームコーディネーターなど活動は多岐にわたるが、家族との時間を大切にしながら、自分をもっと成長させていくつもりだ。
「まずは大学院を修了すること。加えて、まだまだやってみたいことがたくさんあるので、一つずつチャレンジしていきたい。例えば、私は英語ができないので、語学の勉強を始めて身につけたいし、指導者のライセンスを取得することも挑戦していきたいです。
そして、自分が今まで経験してきたこと、学んできたことを伝え、今のアスリートたちがより良い環境になるようにお手伝いしていくことも自分の使命の一つかなと思っています。そういう活動もバレーボールと並行しながら、やっていければ幸せです」
【バレーボール・荒木絵里香さんが「新たな一歩を踏み出すときに大切にしていること」】
「迷ったら自分がワクワクする方を選択することです。私が結婚・出産する時も、選手として充実した時期だったので、正直すっごく迷いました。でも、このキャリアを1回ストップして出産する方がワクワクしたから決断できました。楽しいことって、笑っていることだけが“楽しい”じゃない。人から見たら大変だったり、『何やってるの?』と思われたりすることも含めて、丸ごと楽しめたら最高なこと。そこは自分の捉え方ひとつ。もし何かに新たなことにチャレンジしたい人がいるなら“こうあるべき”“こうでなきゃいけない”にとらわれないで、自分は本当にどうしたいのか、どうなりたい、どうありたいか……自分の本当の声に従って挑戦してほしいと思います」
※「THE ANSWER」では今回の企画に協力いただいた皆さんに「新しい一歩を踏み出す時に大切にしていること」「今、『変わりたい』と考えている女性へのメッセージ」を聞き、発信しています。
(THE ANSWER的 国際女性ウィーク次回は「女性アスリートとメイク」、パラ陸上・中西麻耶が登場)
■荒木 絵里香 / Erika Araki
1984年8月3日生まれ。岡山・倉敷市出身。小学5年生からバレーボールを始める。成徳学園高(現・下北沢成徳高)では同級生の大山加奈らとともに高校全国3冠を達成。卒業後の2003年にVリーグ・東レアローズに入団した。1年目に日本代表デビューすると、2008年北京五輪に出場(5位)、2012年ロンドン五輪は主将として女子28年ぶりの銅メダル獲得に貢献。2013年に元ラグビー日本代表の四宮洋平さんと結婚、出産を経て2014年に復帰した。2016年リオデジャネイロ五輪(5位)に続き、4大会連続出場した2021年東京五輪(予選リーグ敗退)を最後に現役引退。VリーグでMVP2度、ブロック賞8度、歴代最多得点、最多セット出場数など。現在はトヨタ車体クインシーズのチームコーディネーター、バレーボール解説者などを務めながら、早稲田大学大学院スポーツ科学研究科に在籍。身長186センチ。
(THE ANSWER編集部・神原 英彰 / Hideaki Kanbara)