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引退後に起業&ビジネス挑戦を目指す女性アスリートに必要なスキルセットとは

競技団体の理事のポジションについて話す佐々木さん【写真:回里純子】
競技団体の理事のポジションについて話す佐々木さん【写真:回里純子】

競技団体の理事は「無給でやるべきではない」

井本「あまりの差にちょっと、愕然としてしまいますが、その数値は現実だと思いますね」

佐々木「日本を含むグローバル全体のWABNプログラムに関して、1点付け加えたいことがあります。参加したパラ・アスリートたちから『WABNプログラムが、オリンピアンとパラリンピアンを一緒の平等なグループにしたことによって、健常者にも障がいを持つ人々にも、とても貴重なインパクトがあった』というフィードバックをいただきました。実はリーダーシップ・プログラムで、障がい者と健常者が同時に参加する機会はあまりないんですよ」

井本「なるほど、素晴らしいですね。少し私のことについてお話しさせていただきたいのですが、私たちが去年立ち上げた一般社団法人でも、女性アスリートでスポーツ組織の意思決定層に行く人たちの育成のための、女性リーダーシップ育成プログラムをやりたいと構想を練っているんです」

佐々木「それは素晴らしい!」

井本「でもプログラムの内容を練るうえで、少し戸惑っています。というのも、色々な方にヒアリングすると、競技団体の女性理事の方々の仕事や役目って、人によって本当に異なるんです。ですから、共通するスキルセットを決めるのが難しいように感じています。ジャネルさんには今後、是非アドバイスを頂きたいです」

佐々木「もちろんです。それと、ビジネス界にはたくさんの女性理事がいますから、女性理事のためのプログラムをスタートさせたければ、そういった方にメンターになってもらうと良いですよ。

 多くのアスリートが競技団体の理事になりたいと思っていますから、私たちのプログラムも『理事になる準備』という視点を持っています。そしてその経験を、ぜひ“有給の”理事になるために繋げてほしいと思っています(笑)」

井本「それは重要ですね! ただ、日本では有給の理事のポジションなど、少ないのではないかな」

佐々木「でも無給でやるべきではないですよね。以前、WABNと私についての記事を読んだある企業が、女性アスリートの社外取締役を探している、とうちの会社に連絡が来たんです。結局、他の人を採用したようですが、先見の明がありますよね。女性アスリートの持つスキルセットを欲しがっていたんですよ。質問にあったプログラム内容ですが、私はまず、ガバナンスついて学ぶことが大事だと思いますね」

井本「同感です。でも現状、スポーツ団体は女性の比率を上げることにフォーカスしていて、女性理事の方たちに何を求めているのかはクリアではない場合が多いように見えます。だから私も、団体の運営に必要なガバナンスや財政を学んでもらうといいかなと思っているのですが、現実との間にギャップを感じています。おそらく、そこまでやりたくない人が多いんじゃないかな……。無給ですし、男性女性に限らず、会議に出ているだけの理事がたくさんいるようですし」

佐々木「ただ、自分の得意分野を持っていればいいのであって、ガバナンスも財政もマーケティングも、と全部を学ぶ必要はないですよね」

井本「そうですね。自分の強み、得意分野を決められればよいですね。それが、団体にとって必要なものとマッチしていなければならない」

佐々木「その通り」

井本「色々なスポーツ団体の現状を見ると、今のところ、そこがクリアではなく、数合わせのための登用も多いのかなという印象があります」

佐々木「ジョブ・ディスクリプション(業務内容)がクリアではないのでしょうね。でもね、そういう環境でも、理事に登用された側がどんどん、団体の内部に入っていけばいいと思うんです。理事として、自分が何をするべきか、わからなくても関係ない。まず中に入り、そこから探していけばいい。自分で自分のジョブ・ディスクリプションを書けばいいの。ロールモデルを待っているんじゃなく、自分がなるんだという気持ちでね」

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長島 恭子

編集・ライター。サッカー専門誌を経てフリーランスに。インタビュー記事、健康・ダイエット・トレーニング記事を軸に雑誌、書籍、会員誌で編集・執筆を行う。担当書籍に『世界一やせる走り方』『世界一伸びるストレッチ』(中野ジェームズ修一著)など。

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