練習過多、月経不順、疲労骨折… 女子陸上界の課題、39歳まで走った福士加代子の考え
練習も食事も大切にしてほしい「楽しかった」という会話
――月並みな質問ですが、走ることの楽しさを一番どこに感じたから、ここまで長く走れたのでしょうか?
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「特技だったからね、あれが。簡単だし(笑)。走れないっていう人は、ほぼいないでしょう。長く走るのは無理かもしれないですけど。横断歩道で信号がチカチカしたら、みんなちょっと走るでしょ? あれ! あれの延長です(笑)。あれを10分やりましょうと言ったら、10分くらいならできるじゃないですか。ちょっとでも運動した感じなので。手軽で一番良かった。そんなもんですよ」
――今年1月で引退され、現役時代より幅広い活動ができるようになりました。今回を機に、女性アスリートの健康やコンディショニングという点で福士さんが発信していきたいメッセージはありますか?
「私は知識はないので、基本は楽しくやっていたら“血が動く”みたいな感じがあるので。あ、そうそう。話がずれるかもしれないですけど、後輩の選手が彼氏と別れたらストレスで血液性状が変わったんですよ。彼氏とうまくいっている月は数値が全部良かった。なんか(感覚が)ちょっと違うね、みたいな会話を後輩としたことがあって。だから、ちょっと楽しく走ったり、追い込んでもその後に『楽しかったね』みたいなものがあったりすれば、血は(正常に)返ってくるかなと。食べることもそう。食べることは、口に入れるまでは考えるけど、みんな口から入っていった後って考えない。
つい最近、栄養士の先生にも言われたんです。口から入った後のことまで考えると、今は身体のこの部分に栄養が染み渡っているんだと感じるようになる。それで『美味しかったね』『楽しかったね』という会話をした方が、身体への吸収にはいいんじゃないかと。なので、栄養に関しては吸収の方を大切にしたい。私は知識がない分、走って楽しかった、みんなと食べて楽しかった、美味しかったという感情になっていくと、身体がちょっと温かくなる。そうしたことを発信していこうかと思っています。私の経験では、そうした方が血液性状も結構良かったよ、ということも言いたいです」
――最近はデータや情報があふれ、アスリートからもそうした発信が多いですが、シンプルに“日々を楽しく、生活する”という心の充実がいかに競技に反映されるかというのは、意外と抜け落ちる視点かもしれません。
「本当!? みんな、真面目だな……。私の周りは楽しく喋らないとストレスが生まれちゃうし、結局は吸収も悪いよねって考える人が結構多くて。なので、みんな『楽しく食べよう』という風潮はありました。そうやって、脳の方を満足させてしまえば、その方が意外とちょっと量が少なくても満足できることもあると思います。とにかく、何で満足するかの方を取った方が良かったと思いますけどね」
――メンタル面の充実がいかに身体にも影響してくるか、というのは福士さんらしい考えですね。
「たぶん、私、感情でしか生きてないから……(笑)」
(THE ANSWER編集部・神原 英彰 / Hideaki Kanbara)