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減量目的で飲み続け、練習中に倒れた大学生 女性アスリートが下剤を乱用する危険

スポーツを習い始めたばかりの小学生、部活に打ち込む中高生、それぞれの高みを目指して競技を続ける大学生やトップカテゴリーの選手。すべての女子選手たちへ届ける「THE ANSWER」の連載「女性アスリートのカラダの学校」。小学生からオリンピアンまで指導する須永美歌子先生が、体やコンディショニングに関する疑問や悩みに答えます。第27回は「減量目的の下剤使用の危険」。

第27回のテーマは「減量目的の下剤使用の危険」について【写真:Getty Images】
第27回のテーマは「減量目的の下剤使用の危険」について【写真:Getty Images】

連載「女性アスリートのカラダの学校」第27回―「減量目的の下剤使用の危険」

 スポーツを習い始めたばかりの小学生、部活に打ち込む中高生、それぞれの高みを目指して競技を続ける大学生やトップカテゴリーの選手。すべての女子選手たちへ届ける「THE ANSWER」の連載「女性アスリートのカラダの学校」。小学生からオリンピアンまで指導する須永美歌子先生が、体やコンディショニングに関する疑問や悩みに答えます。第27回は「減量目的の下剤使用の危険」。

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 体重増加を気にする選手たちのなかには、食べる量を極端に少なくする人もいれば、食べたものを無理矢理出す、という選手もいます。

 ある大学生の女性アスリートの話をしましょう。大学1年生のAさんは気温の高い日の練習中、グラウンドで倒れてしまうことが数回ありました。

 そこで、女性コーチがコンディションについて尋ねると、暑い日の練習が苦手で、すごく汗をかく日もあれば、うまく汗が出ない日もある、とのこと。また、実は高校時代から生理不順が続き、大学入学後は生理が止まっていることがわかりました。

 さらに、普段の食事の内容を尋ねると、食べる量に波があり、内容も偏っていることがわかります。コーチがもう一歩、踏み込んで話を聞くと、「体重を減らしたくて、高校時代から下剤を飲み続けている」と告白。Aさんの高校の監督は体重管理が非常に厳しく、体重に波のあった彼女は、「使うと楽だよ」とチームメートに勧められるまま下剤を使い始め、計測時に体重を落としていたそうです。

 高校時代から常習していたせいか、「下剤なしだとうまく出ない」とAさん。重い便秘に悩み、服用する薬の量も増えていました。

 下剤は、便秘に苦しんでいるときに、一時的な助けになる薬です。当然、「体重を減らしたいから」という理由で手を出すものではありません。

 下剤を使われた方は身に覚えがあると思いますが、服用すると少し水分の多い便が出ます。これは、本来、出さなくてもよい水分、そしてミネラルなどの電解質が便と一緒に出てしまうためです。体内に必要な水分が排出されるため、脱水になる恐れがあります。

 脱水になるということは、熱中症と同じ症状が起こるリスクがあり、特に運動時は非常に危険です。また、脱水を起こすと、血液中の血漿量が少なくなり、筋肉に酸素を運ぶことがうまくできなくなります。すると、体の動きが悪くなる、脚がつりやすくなる、体温調節がうまくいかなくなるなど、コンディションやパフォーマンスの低下にもつながります。

 また、下剤を使うと、食事から摂った栄養素も、体が吸収する前に便として出てしまいます。つまり、スポーツをする体に必要なエネルギーや、体を効率よく動かすために必要なビタミン、ミネラルなどの栄養素も外に出るため、アスリートにとってマイナスでしかありません。これは、下剤を使用したときだけでなく、嘔吐をしたときも一緒です。

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須永 美歌子

日本体育大学教授、博士(医学)。日本オリンピック委員会強化スタッフ(医・科学スタッフ)、日本陸上競技連盟科学委員、日本体力医学会理事。運動時生理反応の男女差や月経周期の影響を考慮し、女性のための効率的なコンディショニング法やトレーニングプログラムの開発を目指し研究に取り組む。大学・大学院で教鞭を執るほか、専門の運動生理学、トレーニング科学の見地から、女性トップアスリートやコーチを指導。著書に『女性アスリートの教科書』(主婦の友社)、『1から学ぶスポーツ生理学』(ナップ)

長島 恭子

編集・ライター。サッカー専門誌を経てフリーランスに。インタビュー記事、健康・ダイエット・トレーニング記事を軸に雑誌、書籍、会員誌で編集・執筆を行う。担当書籍に『世界一やせる走り方』『世界一伸びるストレッチ』(中野ジェームズ修一著)など。

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