登坂絵莉が中学時代「太っても減量しなかった」理由 指導者と考えた「今」と「将来」
初潮を迎える時期に無理に食事制限をすると起こり得る弊害とは
その後は「月経」のトークを挟み、後半には質問コーナーを実施。減量についても寄せられ、登坂選手の経験とともに伊藤さんと須永教授の見解、分析も語られた。例えば、こんな質問。
――器械体操をしている娘は食べ盛りの中学3年生。食べたいものが世の中に溢れ、誘惑に負けないようにしていることがあれば教えてください。
登坂「私も意志が弱い部分があり、甘いものが大好きで誘惑もたくさんあります。なので、減量中は『買わない』『目にしない』が一番。持っていたら、どうしても部屋で食べてしまうので、五輪前も後輩にチョコレートなどを預けていました(笑)。目の前にあると『1個なら……』とどうしても手が出てしまいがち。なので、目にしない工夫ができるといいのかなと思います」
伊藤「登坂さんは中学時代、食べ物への意識はどうだったのですか?」
登坂「あまり減量していなかったので、結構好きなものを食べていました(笑)。中学生は本当に自由な生活。あまり縛られず、やりたいようにやらせてもらっていたと思います」
伊藤「指導者の方がそのような判断をされたのは今思うと大切なことだったんですね、須永先生」
須永「そう思います。『子供のうちに太ったら、大人になっても太る体質になる』と言って、小学生くらいから減量を勧める親、コーチを目にすることもあります。でも、そうすると、伸びるはずの身長が伸びないなど、成長が制限される危険性があることは理解してほしいです。登坂選手の中学時代のように背が伸びれば、体重が増える。それに合わせて階級を選ぶという選択は非常に重要だと思います」
伊藤「女の子の身長は何歳まで伸びるものですか?」
須永「初潮を迎える直前に一番ぐっと伸びて、初潮を迎えるとだいぶ落ち着くと言われています。伊藤さんはどうでしたか?」
伊藤「ホントにそうです! 中学で20センチ伸びました。高校で4センチくらい。体重制限はしていませんでしたが」
須永「初潮を迎えるのは平均12歳と言われています。そこで無理に食事制限をすると、もしかしたら伸びるはずだった身長が伸びなかったり、生理が止まって骨が成長しなかったり、そういう弊害があるのではないかと考えています」
「体重コントロール」のパートでは自身の経験と、次世代の選手たちにアドバイスをしてくれた登坂選手。イベント後には取材に応じ、改めて競技に励んでいるジュニア世代に自分の体と向き合う大切さを訴えた。
「私の減量法を話しましたが、短期的に落とすことは私自身が正しいと思っているわけではなく、私に合っていたというだけ。仕方なくやっている面もあります。間違いなく、体にとっては普段から体重コントロールをしっかりして、専門家と長期的にやっていくことが一番です。私のようにアスリートの立場で発信してしまうと、それが正解に思われてしまう。そこは間違えてほしくない。なので、自分に合ったやり方を見つけてほしいです」
(「女性アスリートのカラダの学校」第1部レポートvol.2「レスリング選手と月経」に続く)
(THE ANSWER編集部・神原 英彰 / Hideaki Kanbara)