女子運動部のメイクはOK?NG? 運動生理学の専門家として考える「可愛くなる」の効果
メイク、お洒落は一概にパフォーマンス向上を阻むものとはいえない
コンディションの良しあしに関わる要因と聞いて、誰もが最初に思い浮かべるのは、おそらく「身体的要因」です。体重、体力、体調、女性アスリートの場合は月経のサイクルもこれにあたります。
本当にしんどかった重い生理痛 婦人科医に相談、服用し始めたピルが私には合った――サッカー・仲田歩夢選手【私とカラダ】
また、気温や湿度、グラウンドの状況などは「環境的要因」。例えば、テニスコートにはクレーやハードなどの種類があり、選手によって得意不得意がありますよね。このように、コートの種類が力を発揮できるかどうかに関わってくることは、環境的要因にあたります。ほか、チームメートが同じ目標を持って取り組めるのかどうか、指導者のコーチングが適切かどうかといった「人的要因」もあります。
そして、ストレスや緊張、自信などの「心理的要因」も、パフォーマンスに大きく影響します。
ピークパフォーマンスのためには、当然、選手が気持ちのよい状態で試合に臨むことが、とても大事です。これを読んでいる皆さんのなかにも、心の調子を上げるため、例えば試合の日のルーティンを決めている方は少なくないと思います。
それが人によっては、「ポニーテールで走ったら、自己ベストが出たので、それ以来、ずっと試合ではポニーテールで走っている」というように、髪型やお化粧がお守りになる場合もある。「お洒落をする」「可愛くなる」ことが、ウキウキして頑張れる、パワーが出るなどの「やる気スイッチ」になる、というわけです。
もちろん、学校や部活動が、一定のルールを設けることを否定しているのではありません。そもそもメイクや服装については、アスリートか否かに関わらず、そして中学か高校か大学かによっても、学校や家族、社会の捉え方は異なります。また、普段の生活から競技者としての自覚を促す方法の一つとして、髪型や化粧に一定のルールを設ける場合もあるでしょう。
ここで伝えたいのは、女性にとってメイクやお洒落は、一概にパフォーマンスの向上を阻むものとはいえない、ということです。女性と男性のアスリートとの違いの話は、とかく身体的要因に終始しがちです。しかし、これからはメイクや服装が与える心理的要因についても、考察や理解を深めていく必要があると感じています。
(長島 恭子 / Kyoko Nagashima)