女性アスリートが陥る摂食障害 体重32kgになった鈴木明子「食べることが怖くなった」
好転のきっかけは体重を「諦めた」こと「自分の感覚を信じればいい」
摂食障害により、一時期リンクから離れることになった鈴木さんがリンクに復帰したのは約5か月後。翌年には国際大会にも出場するようになったが、肉を食べられるようになったのは、3年も後のことになる。その過程で大きかったのは、「体重を『諦めた』こと」だという。
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「もうずーっと、朝起きたら計って、何か食べたら計って、を繰り返してきました。で、あるとき思ったんです。数字よりも、自分が動けていると感じれば、それがベストなんじゃない? もう今までこれだけ体重計に乗ったんだから、もういいやって。今日、体が軽いのか、重いのかという自分の感覚。そして、鏡に映る自分の姿を信じればいい、と」
体重が減ること以外に目が向くようになると、段階的に食べられるものや、できることが増えていった。そして、体重も食べ物も数字でジャッジしてきた鈴木さんは自分の感覚を信じるようになり、ついには体重計を手放した。
「極端な例ですし、オススメはしません(笑)。ただ、体重を気にしすぎる私の場合、排除したことがよかった」
以来、競技生活の間、年1回、国立スポーツ科学センター(JISS)でのアスリートチェックと、病院に診察などに行ったという以外、体重を計らなくなった。冬季五輪に出場した際も、一度も計測していない。
今振り返っても、なぜ、あれほど体重に執着したのか、自分でもわからないところがあると言う。
「ベスト体重は人それぞれ。筋肉質で元々重めの人もいれば、ちょっと痩せると体力的に続かない人もいます。数字に振り回されないためには『自分の一番調子のいい状態』を普段から把握しておくことがとても大事です。変化がダメではなく、変化を受け止めたうえで、理想のアスリートに成長する。日々、自分は更新されているんだ、という考えを持ち、今の体で最高のコンディションを保てるよう、ベストを尽くすことが大切だと思います」
【「摂食障害」について語った鈴木明子さんが未来に望む「女性アスリートのニューノーマル」】
「女性アスリートはもっと欲張っていい。選手として頑張りたい。でも、女性としても幸せになりたい。それでいいと思います。体を犠牲にした結果、選手時代の一瞬が人生のハイライトでは寂しい。だからこそ、もっともっと、女性の体に対する理解が進み、選手たちが不安や疑問の声を上げやすい環境になってほしい。そして思春期の体の変化を受け止め、まさに『女の子』から『女性アスリート』へと成長し、競技を続けてほしいですね」
■鈴木 明子 / Akiko Suzuki
1985年3月28日、愛知県生まれ。6歳からスケートを始め、2000年に15歳で初出場した全日本選手権で4位に入り、脚光を浴びる。東北福祉大入学後に摂食障害を患い、03-04年シーズンは休養。翌シーズンに復帰後は09年全日本選手権2位となり、24歳で初の表彰台。翌年、初出場となったバンクーバー五輪で8位入賞した。以降、12年世界選手権3位、13年全日本選手権優勝などの実績を残し、14年ソチ五輪で2大会連続8位入賞。同年の世界選手権を最後に29歳で引退した。現在はプロフィギュアスケーターとして活躍する傍ら、講演活動に力を入れている。「THE ANSWER的 国際女性ウィーク」では14日のオンラインイベントにも登場する。
<鈴木明子さん「THE ANSWER的 国際女性ウィーク」オンラインイベントに登場> 最終日の14日に女子選手のコンディショニングを考える「女性アスリートのカラダの学校」を開催。アスリートの月経問題について発信している元競泳五輪代表・伊藤華英さんがMC、月経周期を考慮したコンディショニングを研究する日体大・須永美歌子教授が講師を担当。第1部にはレスリングのリオデジャネイロ五輪48キロ級金メダリストの登坂絵莉さん、第2部には元フィギュアスケート五輪代表の鈴木明子さんをゲストに迎え、体重管理、月経、摂食障害など実体験をもとに議論する。参加無料。応募は「THE ANSWER」公式サイトから。詳細(https://the-ans.jp/event/147825/)。
(「THE ANSWER的 国際女性ウィーク」4日目は「女性アスリートと恋愛」、プロマラソンランナー・下門美春さんが登場)
(長島 恭子 / Kyoko Nagashima)