生理と重なった五輪 伊藤華英が語る、女子アスリートと思春期の付き合い方
海外選手は15歳からピル服用も…「飲んでいない、あなたたちがおかしい」
海外では、驚くほど環境が異なっていた。欧米の選手は当たり前のように飲んでおり、伊藤さんは「飲んでいない、あなたたちがおかしい」と言われたこともある。実際に友人の選手は15歳から服用していたといい、「発展途上国を除けば、飲んでいなかったのはアジアの一部くらいじゃないか」と言う。それほど、実態に隔たりがあった。
本当にしんどかった重い生理痛 婦人科医に相談、服用し始めたピルが私には合った――サッカー・仲田歩夢選手【私とカラダ】
日本では知識がまだまだ浅いのが現実。ただ、一流アスリートのみならず、一般の中高生でも思春期の問題は共通だ。「JOCオリンピック・ムーヴメントアンバサダー」として幅広い経験を行う伊藤さんは「中高生は初めての経験で、よくわからない。指導者に知識が浅いと、子供たち一番苦しい。特に男性指導者が適切な指導ができないこともある」と指導現場の問題を指摘する。
とりわけ、部活指導の現場においては、強豪校なら専門の外部指導者を呼んでいることもあるが、一般的には教員との掛け持ち。「先生が授業も抱えて仕事量が多く、情熱がないと部活を見られないということもある。そういう中で、専門的な分野の役割を分散していければ理想的なのかなと思います」と話す。
例えば、ピルは症状を抑える方法の一つだが、もちろん、リスクが全くないわけではない。「副作用として太る、ニキビができる、甘い物が食べたくなる、おなかが張るなどのことはあった。3か月くらいは慣れるまで大変。長い目で見て服用することが大事。だから、いきなり大会で、というのは私の経験から言うと厳しい」と伊藤さんは明かす。
しかし、医師の指導の上で、体に合った薬を服用すれば、メリットはあると考えている。生理が来ていれば、正しい用量で飲む分には健康上、問題ないといわれている。
「いずれにせよ、まずは婦人科で相談することが大事です。その上でコーチと連携して情報共有できればいい。特に10代の若い子には『婦人科=病気、妊娠』という見られ方をしがちだけど、産婦人科とは違うという概念を持った方がいい。海外はエイズに対する考えもあるから、すごくしっかりとしています」