日本の五輪選手4人に1人が使う低用量ピル 避妊だけじゃないアスリートにとっての効果
スポーツを習い始めたばかりの小学生、部活に打ち込む中高生、それぞれの高みを目指して競技を続ける大学生やトップカテゴリーの選手。すべての女子選手たちへ届ける「THE ANSWER」の連載「女性アスリートのカラダの学校」。小学生からオリンピアンまで指導する須永美歌子先生が、体やコンディショニングに関する疑問や悩みに答えます。第18回は「低用量ピル」について。
連載「女性アスリートのカラダの学校」第18回―「低用量ピル」について
スポーツを習い始めたばかりの小学生、部活に打ち込む中高生、それぞれの高みを目指して競技を続ける大学生やトップカテゴリーの選手。すべての女子選手たちへ届ける「THE ANSWER」の連載「女性アスリートのカラダの学校」。小学生からオリンピアンまで指導する須永美歌子先生が、体やコンディショニングに関する疑問や悩みに答えます。第18回は「低用量ピル」について。
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皆さんは「低用量ピル」という薬を知っていますか?
恐らく女性アスリートの多くは、「名前は知っているけれども詳しくは知らない」「調べたことはあるけれど見たことはない」という方が多いと思います。
「低用量ピル」とはホルモン剤のことです。国際的には経口避妊薬(OC)や低エストロゲン・プロゲスチン配合薬(LEP)と呼ばれています。
低用量ピルには、エストロゲンとプロゲスチンというホルモンが含まれます。服用すると、「体のなかにホルモンが十分あるから、これ以上ホルモンを分泌しなくても大丈夫!」と脳が判断。すると、卵巣から分泌される女性ホルモン(エストロゲンやプロゲステロン)の分泌が低下。排卵が起こらなくなり、生理が止まります。
また、服用を続けると、子宮内膜が薄くなって経血量が減少する、月経困難症の原因物質が低下するといった作用もあります。一般的には「避妊の薬」というイメージが強いのですが、実は月経困難症やPMS(月経前症候群)、過多月経(経血量が多い)など、生理のさまざまなトラブルの治療にも使われているのです。
アスリートの場合、生理の来る時期をずらすために服用する選手もいます。
低用量ピルを飲んでいる間は、生理は来ません。大事な試合や合宿に生理がぶつからないよう、時期を早めたり、遅らせたりと、タイミングをコントロールします。
2008年に欧米で行われた調査によると、82%のトップアスリートが低用量ピルを服用している、と回答。一方、日本で行った調査では、2016年リオデジャネイロ五輪出場選手164人中、27.4%の選手が「ホルモン剤で継続的に月経対策を行っている」と回答しています。その前の2012年ロンドン五輪出場選手(156人)は7%だったので、近年、日本のトップアスリートも低用量ピルを活用する選手はグッと増えているようです。
ただし、低用量ピルは「薬」です。服用後、変調がない人もいれば、副作用が出る場合もあります。
副作用の主な症状としては、吐き気や頭痛、下腹部の痛み、乳房の張り、不正出血などが挙げられます。なかには「少量の出血が1か月近く止まらなくて困った」など、長い人では2~3か月にわたり、副作用に悩まされるケースもあります。
たまに学生から「試合が3日後なので、生理を止めたいんです!」という相談を受けますが、それはダメだよ、といつも言っています。