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女性アスリートが敏感になる体重の増減 「痩せにくい」生理前こそ実は減量に向くワケ

生理の2週間前は女性ホルモンの分泌が活発になるタイミング、体重が増えることをプラスに考えてトレーニング計画を立てるのも一つのアイデア【デザイン:野口佳大】
生理の2週間前は女性ホルモンの分泌が活発になるタイミング、体重が増えることをプラスに考えてトレーニング計画を立てるのも一つのアイデア【デザイン:野口佳大】

体重測定前にトイレでつばを吐いていた女子選手

 しかし、そうはいっても体重が重くなる黄体期は「こんなに走り込んだのに、どうして痩せないの」と思うことが続き、落ち込んだり、トレーニングのモチベーションが下がったりする選手が多いのも事実。私が約1700人の体育系女子大学生に行った「月経前に日常生活や試合に悪影響を及ぼす体調の変化」についてのアンケート調査を見ても、一番多かった回答は「食欲の増加を感じる」(61.7%)で、次は「体重の増加を感じる」(36.4%)でした。

 しかし、そもそも、2週間程度で脂肪や筋肉などの組織が何kgも変化することはありません。短期間に体重が変化する原因は、水分の増減と考えられます。なので、この時期に体重が落ちなかったからといって、落ち込む必要はまったくないのです。黄体期が終わった後、あるいはもっと長い目でみれば、必ず結果につながります。自分を信じて、コツコツとトレーニングを続けていきましょう。

 女性アスリートにとって、体重の増減は切実な問題です。学生アスリートの間では、今でも「汗をかいて何とか体重を落とそう」とする傾向がみられますし、私がヒアリングした選手のなかには、「体重測定の前はできるだけ水分を出したい」と、トイレに行ってつばを吐くという選手もいました。

 かくいう私も、陸上部だった高校時代、月に1度の体重測定のたびに、戦々恐々。体重が増えているとこなさなければいけないメニューが増えるため、「少しでも減らしたい」という気持ちで、息を吐き切ってから体重計に乗っていたぐらいです(息を吐いても体重は変わりませんよ!)。

 今思えば、息を吐いていた私は笑い話でしかないですし、つばを吐いていた選手も、冷静に考えれば、1、2gつばで体重を減らしたところで、パフォーマンスは変わらないことなどわかると思います。でも、皆、それだけ体重の増減には敏感になるものです。

 少しでも効率よく体脂肪を減らしたい、減量をしたいと考えるならば、生理の2週間前の「女性ホルモンの分泌が活発になる」タイミングを生かして、トレーニング計画を立てるのも一つのアイデアです。むしろ体重が増えるこの時期は、逆に言うと、体が重くなった分、運動時のエネルギー消費量も増える、と考えられます。「体重を減らさなければいけないのに、体重が増えていてショック」と落ち込まず、黄体期こそ息が少しはずむ程度のペースで長時間走るなど、脂肪燃焼効果の高いトレーニングに取り組んでみてください。

(長島 恭子 / Kyoko Nagashima)


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須永 美歌子

日本体育大学教授、博士(医学)。日本オリンピック委員会強化スタッフ(医・科学スタッフ)、日本陸上競技連盟科学委員、日本体力医学会理事。運動時生理反応の男女差や月経周期の影響を考慮し、女性のための効率的なコンディショニング法やトレーニングプログラムの開発を目指し研究に取り組む。大学・大学院で教鞭を執るほか、専門の運動生理学、トレーニング科学の見地から、女性トップアスリートやコーチを指導。著書に『女性アスリートの教科書』(主婦の友社)、『1から学ぶスポーツ生理学』(ナップ)

長島 恭子

編集・ライター。サッカー専門誌を経てフリーランスに。インタビュー記事、健康・ダイエット・トレーニング記事を軸に雑誌、書籍、会員誌で編集・執筆を行う。担当書籍に『世界一やせる走り方』『世界一伸びるストレッチ』(中野ジェームズ修一著)など。

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