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指導者が「理解しがたい」月経前症候群 「甘えだ」と言う前に理解してほしい症状

スポーツを習い始めたばかりの小学生、部活に打ち込む中高生、それぞれの高みを目指して競技を続ける大学生やトップカテゴリーの選手。すべての女子選手たちへ届ける「THE ANSWER」の連載「女性アスリートのカラダの学校」。小学生からオリンピアンまで指導する須永美歌子先生が、体やコンディショニングに関する疑問や悩みに答えます。第9回は「月経前症候群の特徴」について。

第9回は「月経前症候群の特徴」について(写真はイメージです)
第9回は「月経前症候群の特徴」について(写真はイメージです)

連載「女性アスリートのカラダの学校」第9回―「月経前症候群の特徴」について

 スポーツを習い始めたばかりの小学生、部活に打ち込む中高生、それぞれの高みを目指して競技を続ける大学生やトップカテゴリーの選手。すべての女子選手たちへ届ける「THE ANSWER」の連載「女性アスリートのカラダの学校」。小学生からオリンピアンまで指導する須永美歌子先生が、体やコンディショニングに関する疑問や悩みに答えます。第9回は「月経前症候群の特徴」について。

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 生理前になると、イライラしたり怒りっぽくなったりする、頭痛やめまいなどの症状に悩まされる。これを月経前症候群(以下、PMS)といいます。

 症状はだいたい生理の1週間前から始まり、生理が始まると、みるみるうちに治まるのがPMSの特徴。はっきりとした原因はわかっていませんが、女性ホルモンの急激な変化が、脳から分泌される神経伝達物質などに影響を及ぼすためと考えられています。

 ある調査によると、日本人の大学生女性アスリートの44.3%が、PMSによる障害がパフォーマンスに影響すると感じています。また、高校の運動部員への調査でも41.1%がPMSを自覚しているという結果が出ています。ちなみに大学生の調査の結果をみると、なかでも「強い不安」や「過食」の症状が重いという傾向がみられました(Takeda et al. J Pediatr Adolesc Gynecol. 2015)。

 PMSにより、感情の起伏が激しくなる、体に不快な症状があると、日々の練習や試合に影響します。また、今はPMSの症状がなくても、年齢を重ねたり、妊娠をしたりということがきっかけで始まる人もいます。その時が来たときにうまく対処できるよう、ぜひ、知っておいてくださいね。

 まず、「この症状の原因はPMSだな」と自覚するだけでも、うまくセルフマネジメントできるようになります。PMSはネガティブな精神状態になるのが特徴です。例えば、チームメートや指導者にイライラしたり、なんとも表現できない感情が突然、沸き上がったりします。そうなったときは、「この気持ちは相手のせいでも自分のせいでもなく、生理前だからだ」と、自分の感情をちょっと俯瞰から眺めてみてください。たったこれだけのことで、感情が落ち着いてきます。

 実は生理学や月経周期の知識がある私でさえ、生理前に自己肯定感が下がったり、落ち込みやすくなったりなど、一瞬、感情に振り回されることがあります。でも、「あ、そうだ。今、生理前だからPMSの症状かも」と考えると、感情をコントロールすることができて、自分を責めるような気持ちもスッと消えていきます。

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須永 美歌子

日本体育大学教授、博士(医学)。日本オリンピック委員会強化スタッフ(医・科学スタッフ)、日本陸上競技連盟科学委員、日本体力医学会理事。運動時生理反応の男女差や月経周期の影響を考慮し、女性のための効率的なコンディショニング法やトレーニングプログラムの開発を目指し研究に取り組む。大学・大学院で教鞭を執るほか、専門の運動生理学、トレーニング科学の見地から、女性トップアスリートやコーチを指導。著書に『女性アスリートの教科書』(主婦の友社)、『1から学ぶスポーツ生理学』(ナップ)

長島 恭子

編集・ライター。サッカー専門誌を経てフリーランスに。インタビュー記事、健康・ダイエット・トレーニング記事を軸に雑誌、書籍、会員誌で編集・執筆を行う。担当書籍に『世界一やせる走り方』『世界一伸びるストレッチ』(中野ジェームズ修一著)など。

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