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日本で聞かないスペイン野球界のリアル サッカーの国が希求する大谷並みの見える象徴

セグラ氏はスペインの野球の未来に希望を持っている【写真:Rafa Huerta(ラファ・ウエルタ)】
セグラ氏はスペインの野球の未来に希望を持っている【写真:Rafa Huerta(ラファ・ウエルタ)】

スペイン野球がメジャーになるために必要なのは「目に見える“アイドル”」

 その反面、課題も浮き彫りになっている。スペイン代表が現在参戦しているユースカテゴリーはU-15、U-18だけ。一方、カタルーニャでは、8歳以下のミニベースボール、U-10、U-12、 U-14、 U-16、 U-18と各年代を分けた上で、リーグ戦はもちろん、国際大会の参戦を奨励している。つまり、9歳から13歳までの子供達は代表レベルでプレーする機会がない。それがスペイン全体の代表の成長を妨げている原因の一つだ。

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 A代表が抱える問題も少なくない。2019年、スペインのU-18代表は欧州で2位になり、韓国で行われたWBSC U-18W杯に出場。しかし、同大会に出場して現在もA代表に残っているのは1~2人だという。現在、代表チームの半数以上は二重国籍の選手たち。スペイン生まれスペイン育ちの選手が食い込めないのが実情だ。セグラ氏は「ミックスがなければ、スペインとしての向上はない」と考える。

 それでもセグラ氏は野球の魅力をスペインで伝えようと努力も続けている。

「五輪から野球が外されるなど、球界にとっては厳しい状況が続いているけれど、野球の魅力がそれで変わるわけじゃない。僕の夢は、学校に通う子供たちが、一度はバットで打つという感触を知ってほしいということなんです。実際、そういったプロモーションを行っています。

 サッカーでPKを蹴るとか、あんなものじゃないですよね。バットで打った時の感覚は、何事にも変えがたい。それを知ったからといってすぐに地元の野球チームに入ってくれると期待するわけじゃない。単にあの感動を人生に一度は味わってほしいんです」

 スペインで野球がメジャーになるというのは夢なのか。セグラ氏は、それを現実のものとするために必要なものを聞くと「アイドルのビシビリティ(視認性)」という言葉が出てきた。その例に挙げたのが、スペイン野球界の象徴ともいえるホルヘ・バルボア選手の存在だ。

「ホルヘ・バルボアはスペインA代表の選手で、カタルーニャでずっと野球をしてきて、イタリアリーグやさまざまなチームでプレーし、日本の独立リーグ・高知ファイティングドッグスでもプレー経験がある。でも、子供たちはバルボアを知らないのです。彼はプロとして全キャリアを通してプレーしてきたし、野球大国の日本でもプレーしたというのに。

 サッカーなら以前ならメッシ、今ならペドリになりたいと思う子どもがいる。日本だったら、以前はイチロー、今ならオオタニに憧れる子供たちがいるでしょう。その子供たちが野球の未来を作っていくのですから、そのためには目に見えるアイドルが必要です。

 バスケットボールにしても、スペインから(NBA選手の)パウ・ガソルが出てくるなんて、20年前は誰も想像しなかった。今、米国のMLBのユースに行っている子供たちが育ち、MLBでプレーして地元に戻ってくるかもしれない。(2019年にバルセロナに復帰した)ガソルのようにね」

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「試合のルール自体を改正していく時期にきているのではないかと思う。なぜ、スペインでサッカー人気が強いのか。理由の一つは、前半45分、間に15分あって、後半45分が過ぎれば、試合が終わるとわかっているから。一方、野球は始まる時間は決まっているけど、終わる時間はわからない。忙しい現代人にとって、これはデメリットでしかない。ソフトボールのルールを野球にも取り入れるとか、もっとスピード感を上げる必要があると思う。その長さに見合ったエンターテイメント性がないといけないでしょう」

(山本 美智子 / Michiko Yamamoto)


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