ダルビッシュ、思わぬ3失点に隠れた好影響 栗山監督「ダルの思いはみんなに伝わる」
栗山監督が力説「ダルの思いがみんなに伝わっていることは間違いない」
若い選手たちへ積極的にアドバイスを送り、急造チームの結束に大きな役割を果たしたことは周知の通り。吉井理人投手コーチは「栗山監督の方針でこのチームはキャプテンを置いていないけれど、ダルがキャプテンのような役割を果たしてくれている」と指摘。厚澤和幸ブルペンコーチは「ダルのいいところは、若手にアドバイスするだけでなく、山本由伸の“やり投げトレーニング”など、若い選手が行っていることを試し、取り入れようとする。その姿勢がまた一体感を生む」と見ている。
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ダルビッシュが思わぬ3失点を喫したその裏、味方打線が一気に4点を取り返したのも偶然ではない。栗山監督は「(野手陣が)必ず取り返してやると、みんなが思っていたと信じているし、僕自身そう思っていた。みんなにそういう風に思わせるくらい、ダルの思いがみんなに伝わっていることは間違いない」と力説する。
2012年ロンドン五輪の競泳男子400メートルメドレーリレー決勝。前回大会まで2大会連続2冠だった北島康介が、個人種目でメダルを逃していた。若い選手たちが「康介さんを手ぶらで帰すわけにはいかない」と奮起。銀メダル獲得の原動力となったことは有名なエピソードだ。ダルビッシュには当時の北島に共通するカリスマ性があるのかもしれない。
一方、ダルビッシュは自身の投球を「今年初めての試合(実戦登坂)にしては、球速が出ていた。スライダーの曲がりもよかったが、点を取られた3回はそのスライダーが甘く入った」と淡々と振り返った。
もともと、日本代表について「戦争に行くわけではない。気負う必要はないと伝えたい」と語り、若い選手に「世界一奪回のために必要なことは、世界一を考えないこと。結果を気にしすぎると、どんどん自分が追い詰められていくから」と若手に言い聞かせていた。日の丸を背負う重圧を、ことさらに強調はしない。そこがまた、イマドキの若い選手のマインドに合うのではないだろうか。
大会開幕直前に合流した大谷、ラーズ・ヌートバー外野手、吉田正尚外野手らの活躍で士気が上がる侍ジャパン。その中でも、ダルビッシュが精神的支柱であることに変わりはなさそうだ。
(宮脇 広久 / Hirohisa Miyawaki)