月給5万円、チェコのプロ野球選手になった田久保賢植 覆された“野球後進国”の印象
日本に一泡吹かせるだけの充実した戦力「旅行気分で来る選手なんていない」
そんな中でチェコが初めて挑むWBCの大舞台。日本人野球ファンは同組の1次ラウンドでの白星を計算したくなる。だが、田久保さんの見立ては違う。「サッカーのW杯で日本がドイツやスペインに勝って世界を驚かせたけど、同じようにチェコがWBCで世界を驚かせる可能性は十分ありますよ」とニヤリと笑った。
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「私がチェコにいた時代の強豪はイタリアやオランダで、スペインやドイツも強く、そこにチェコがついていく図式。そんな相手に対して、バントとかエンドランとか小技を駆使するチームでした。身長180センチくらいある選手がセーフティーバントをやったり、右打ちをしたり……。そんなところを重要視しているチームが今回はパワーアップしている。ホームラン打者も多いし、結構ボールを動かしてくる投手もいる。
私が当時対戦していた強豪チームのエースが今回のエースで、メジャーを見て育った選手がその下の世代を固めている。しっかり融合しているし、今回、旅行気分で来る選手はいません。エンジニアをしている選手なんて有休を全部使って出場するそうです。うまくはまればロースコアの試合になると思います。チェコの目標は予選ラウンド3勝1敗で準々決勝進出。その力は十分にあると思います」
今大会、チェコ代表を全面サポートするという田久保さん。サッカーW杯で日本が優勝経験国のドイツ、スペインを撃破したように、チェコがWBC優勝経験国の日本から大金星を奪う――。そんなシナリオを思い描いている。
【私が望む世界の野球の未来】
「サッカーのW杯のように盛り上がるコンテンツになってくれることですね。そんな規模感になった時が野球の本当の発展なんじゃないかなと思います。障害があるのは分かっています。まず私は、自分が見えている範囲でやるだけ。大きなことを掲げて、周りを巻き込んでダメにしてしまうと、それはスポーツに対しての信用も失ってしまう。自分ができることをやって次のチャンスがくるかもしれないし、来なかったらしょうがない。そんな感じですね」
■田久保賢植(たくぼ・けんしょく)
1984年3月31日生まれ。千葉県八千代市出身。9歳から野球を始め、17歳で渡米すると、日本では独立リーグの徳島インディゴソックスや大阪ホークスドリームなどでプレー。カナダ、オーストラリアに渡り、2012年にチェコ1部リーグのフロッシ・ブルノでプロ契約。初めてチェコのプロ野球でプレーした日本人選手となった。14年にはオーストリアのフェルトキルヒ・カージナルスに入団。同国U-21代表監督、同代表守備走塁コーチを務め、フロッシ・ブルノに戻った15年を最後に現役引退した。引退後は八千代市内でプライベートジム「On Deck Circle」を運営する傍ら、都内の軟式野球部など3チームを指導。一般社団法人オールネーションズ副代表として野球啓蒙活動や社会貢献事業などを行っている。
(THE ANSWER編集部・瀬谷 宏 / Hiroshi Seya)