月給5万円、チェコのプロ野球選手になった田久保賢植 覆された“野球後進国”の印象
実感した育成の重要性「チェコがWBCに出場できたのは納得」
「自分は同じところにいることがすごく停滞だと思っている」という田久保さんはチェコでのシーズンを1年で終えると、日本、米国の独立リーグでプレーした後、再び欧州に戻りオーストリアのチームに加わった。チェコ在住時代、オーストリアの日本人指導者と情報交換をしていたことが縁で、チームで選手兼任監督としてプレーしながらオーストリア代表の守備走塁コーチにも就任した。子どもたちの指導という役割も加わったが、田久保さんに抵抗はなかった。
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「指導者に向いているかどうかではなく、合わせて行かないといけない。自分のマインドセットをどんどんぶっ壊していくっていうのも大きなテーマでした。苦手とか言うのではなく、自分がその時にできるベストをやろうと思ってやっていました」。大阪時代に門田氏が自分に監督を任せたことの意味がおぼろげに理解できてきた。
欧州で野球をやることで感じたものがある。それは育成の枠組み作りの充実ぶりだ。チェコのチームはU-15やU-18といったユースを保持し、選手が直接指導を行う。行政が補助金を出し、地域活動による社会貢献といった役割も担う。サッカーなどでよく見られる育成システムをそのまま野球にも適用。「そういった仕組み作りができているというのは10年前にも感じていた。だから今回WBCに出場できたのも納得です」と田久保さんは語る。
欧州の野球文化発展にはMLBが寄与している。欧州各国にアカデミーを作り、選抜チームによるトーナメント戦を開催。メジャーで大成しなかった選手をアカデミーに送って育成させたり、逆に欧州からドラフトにかかった選手が自国に戻って育成に関わったり、という仕組み作りもできている。その意味で、田久保さんは昨年末に行われていたサッカーW杯を羨ましく見ていたという。
「例えば、日本人でもドイツ対スペインとかってなるとちょっと興奮するじゃないですか。でも野球にはそれがない。日本は日本のことばかり。それでは野球はやっぱり広がっていかない。結局、業界の1位と言われる日本の野球が内政型で、世界の野球そのものの文化は育っていない。だからマーケットが広がっていかない。普及という使命を背負わされているのに、そこに目をつむっているという感じがしているんです」と日本球界の欠点も指摘する。