ボディビル界の伝説と呼ばれる男 56歳の今も衰えぬ情熱、30年前は「ボディビルの『ボ』の字も…」
10月8日に行われた日本ボディビル・フィットネス連盟(JBBF)主催の階級無差別日本一を決める「日本男子ボディビル選手権大会」で、ひと際大きな歓声を浴びた男がいた。56歳のベテラン・須江正尋。9位に終わったものの、30年以上第一線で活躍し続けるレジェンドは、熱のこもったパフォーマンスで若い世代のファンも魅了した。「ボディビルの『ボ』の字も言えなかった」時代を知る男に、競技発展への熱い思いを聞いた。
コンテストで輝く選手たちを紹介「ボディコンテスト名鑑#41 須江正尋」
10月8日に行われた日本ボディビル・フィットネス連盟(JBBF)主催の階級無差別日本一を決める「日本男子ボディビル選手権大会」で、ひと際大きな歓声を浴びた男がいた。56歳のベテラン・須江正尋。9位に終わったものの、30年以上第一線で活躍し続けるレジェンドは、熱のこもったパフォーマンスで若い世代のファンも魅了した。「ボディビルの『ボ』の字も言えなかった」時代を知る男に、競技発展への熱い思いを聞いた。
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フリーポーズで鍛え上げた背筋にグッと力を込めると、満員の観客から惜しみない喝采が送られた。優勝した24歳の相澤隼人に負けるとも劣らない須江の声援。人気の高さは、大会終了後の会場ロビーでも顕著だった。
大会の感想を聞こうと、観戦した15~23歳の観客6人組に取材していた時のこと。突如姿を現した須江に気が付くと、若者たちは「おお!」「スゲー、スゲー、スゲー!」と興奮の声を上げた。自身も学生ボディビルダーをしている23歳の山本俊和さんは「憧れない理由はないんじゃないですかね」と須江の魅力を熱弁した。
「ボディビルにかけている思いが、ポージングから感じられます。学生の頃から長くやられていて、入賞してもなかなか優勝する機会には恵まれない選手。それでもこれだけ応援されて、みんなからの視線や応援を集め、凄く記憶にも残る。ポージングや熱いオーラが人を惹きつけているのかなと思います」
30年以上に渡って競技を引っ張り、いつしか付いた異名は“伝説”。日本ボディビル界のレジェンドは、ステージで受けた大きな声援に「聞こえますね。ありがたいことだと思います」と感謝しつつ、「まあ、長くやっているので、それだけ知ってくれている人がいるのかな」と至って謙虚だ。
長年続けてこられた理由として、身近な人の理解と一緒にやってきた仲間や後輩の存在を挙げる。2年前には仕事を辞めてトレーニングジムを立ち上げ。「今度は自分がそういう場を提供してあげられたら。今と同じパフォーマンスはあと20年、30年とはおそらく発揮できないので、若い世代にどんどん引き継いでいかないといけない」と後進への橋渡し役を目指す。
一方で、現役選手として若い世代に負けるつもりはない。日本選手権でも目指すところは優勝だ。「自分が本気でやっていかなかったら、やはり次の世代の人だって本気ではやってくれないと思う。ちょっとやそっとではまだ引かないつもりではいますよ」。全力でぶつかり、背中で引っ張る。その姿勢が若手を惹きつけるのだろう。