学生駅伝の名門、駒大復活の舞台裏 大会前にボディメンテを使った理由
眠っていた学生駅伝の名門が、目覚めの時を迎えた。
名将・大八木監督と田澤&鈴木が語る駒大復活までの道のり
眠っていた学生駅伝の名門が、目覚めの時を迎えた。
駒澤大学陸上部は昨シーズン、学生駅伝で2冠を達成。古豪と言われるようになった名門が、復活を高らかにアピールした。新チームで3年生ながら主将に就任した絶対エース・田澤廉は語る。
「自分が思うような走りをできなかったレースもあったけど、勝つことができた。それが何を意味しているかというと、エース頼みじゃないチームになってきたということ。『田澤がダメなら、自分でなんとかしよう』という気持ちを全員が持っていたから、優勝もできたと思います」
駒大といえば、学生3大駅伝で多くのタイトルを獲得し、常勝軍団の称号を欲しいままにしてきた。日本を代表するマラソンランナー中村匠吾ら多くの名ランナーを輩出したが、近年チームは低迷。しかし、未曾有の新型コロナ禍において、見事に甦った。
背景にあったのは「突き上げ」だ。1995年にコーチ就任、2004年から指揮を執る大八木弘明監督はチームに起きていた変化を明かす。
「当時の1年生の意識が高く、上級生に攻めていく姿勢があった。2年生もやらないといけないという気持ちになり、1、2年生の意識の高さが3、4年生を刺激してくれて、チームが底上げされたというところ。3、4年生はうかうかできなかったでしょう」
当時1年生の多くは学生長距離界のスターである1年先輩・田澤に憧れ、駒大の門を叩いた。入学当初から指揮官は「この学年で3人は駅伝のレギュラーになってくれ」と鼓舞。鈴木芽吹(2年)は大八木監督の期待に応えた一人だ。
田澤が「自分が抜けた後のエースは現時点で鈴木しか考えられない」と認める後輩は、目指すべき背中があることの効果を語る。
「田澤さんは大学というステージだけど、常に世界を目指してやっている。自分はまだまだ背中も見えない状態だけど、大エースという目標があって自分は成長できている。だから、1年生だからと考えず、3大駅伝も全部レギュラーで走ろうと思ってやってきました」
コンディション管理に高い意識、大目標の大会に向けてボディメンテを活用
互いを高め合う駒大の選手たち。高い意識が見えるのは何も大会や練習ばかりじゃない。コンディション管理もその一つだ。
駒大は大八木監督の夫人・京子さんが寮母として食事を切り盛りし、1年生はスポーツ栄養にまつわる指導を受ける。貧血予防になる鉄分の重要性など、陸上をする上で必要な知識をそれぞれが蓄えている。
食事にはかなり気を使っているという田澤は「寮の食事は朝と夜は出るけど、昼は自分の管理下になる。昼でいかにしっかりとした栄養を取れるかは考えている」といい、近所のコンビニではなく、栄養面に配慮された品揃えが多いという弁当屋まで足を伸ばす。
疲労回復効果があるチーズ、ヨーグルトなどの乳製品を補食としてプラス。「ドリンクは鉄分を含んでいるものを意識している」という。一方の鈴木は高校時代まで疲労骨折が多いことが悩みだった。寮の食事で小魚入りのふりかけを意識して使うなど、カルシウム摂取を心掛けている。
大八木監督にとっては、これまで選手のコンディション管理で頭を悩ませることがあった。
大会直前に冬に流行する感染症でレギュラークラスが体調を崩すことがあり、対策の必要性を痛感していた。ただでさえ体脂肪が少なく、ハードなトレーニングをこなす長距離選手。競技力を伸ばしながら、繊細な自己管理が求められる。
「フィジカルはもちろんだし、メンタルから来る負担は大きい。今の子たちはそういうところにすごく敏感。練習はやれていても、ストレスから内臓疲労が来て、食欲が湧かずに体調を崩すところがある。そこをなんとかしたいと思っていた」
大目標にしていた大会に向け、取り入れたのがボディメンテだった。大八木監督は「ボディメンテを取り入れた年は手応えを感じ、これはいいなと思って使った」と明かす。
摂取するタイミングは個人に任せられているが、朝練習の後に飲むのは田澤。「コンディションのプラスになるなら飲んでおきたい」と言い、朝練習もしくは午後練習の後に飲んでいる鈴木は「味も飲みやすいし、気に入っている」と笑う。
ただ速さを求めることだけではなく、こうした意識の高さが、もう一つの駒大の強さの秘訣でもある。
王者として迎えた新シーズン、田澤「守りではなく攻める走りを」
大八木監督はこうも話す。
「練習が終わったら、エース格の選手たちは練習場所にまでボディメンテを持参して自主的に飲んでいます。意識の高い選手とそうじゃない選手の差はそういうところに現れているし、体調と栄養をきちんと考えている選手は、コンディションがしっかりコントロールできています」
そして、迎えた新シーズン。エースとして主将としてチームを牽引する田澤は「追われる立場になるけど、守りに入るのではなく攻めた走りをすること」と静かな口ぶりに熱い決意を込める。復活を遂げた駒大。11月の全日本大学駅伝で優勝し、通算24個目のタイトルを獲得した。
しかし、それはまだ、再び築こうとしている常勝軍団への第一歩に過ぎない。
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(THE ANSWER編集部)