オールブラックスを経験した男 三菱重工相模原の26歳ヘモポが日本を選んだワケ
オールブラックスは「選手としても人間としても成長させてくれる場所」
簡単な決断ではなかった。日本でプレーすることになれば、再びオールブラックス入りする可能性は減ってしまうかもしれない。ただ、レギュラーとしてプレーする時間が欲しかった。
「やっぱりラグビーが好きだし、ラグビー選手だからプレーする時間が欲しい。僕がオールブラックスに選ばれる時は怪我人の穴埋めが多くて、初めからメンバーに選ばれているわけではなく、ベンチを温めることが多かったんだ。NZでは26歳といっても決して若くはない。若くて素晴らしいタレントが次々と現れる中、僕は日本で新たなチャレンジに踏み出すことに決めたんだ」
もちろん、ラグビーを国技とするNZに生まれた男だ。たとえレギュラーに定着できなくても、オールブラックスに選ばれたことは極上の幸せ。NZが世界に誇るトップ選手とともに過ごした経験は、大きな誇りにもなっている。
「学校で将来の夢を書く時、NZではほとんどの子どもたちが『オールブラックスでプレーしたい』って書くんだ。僕もそう書いた一人。オールブラックスに選ばれたことは本当にアメージングな経験だった。周りにいる選手やスタッフは、みんなが一流。ラグビーの経験や知識が格段に増して、ラグビーというスポーツに対する理解も深まる。選手としても人間としても成長させてくれる場所なんだ」
漆黒のジャージーを身にまとい、キックオフの前には勇壮なハカを舞うオールブラックスには、伝統と実績に裏打ちされた品格が漂う。NZラグビー界を代表する選ばれし者、という自覚は、時として大きな緊張感にもなったようだ。
「オールブラックスの選手になると、周りから格別な尊敬を受ける。自分も誇らしい気持ちになるけれど、その名に恥じない振る舞いをしようと緊張しっぱなしで(笑)。練習、ミーティング、滞在ホテル……どこにいても気持ちが張り詰めたままで、家に帰った途端にホッとした気分になったことを覚えているよ」