帰ってきた三菱重工相模原 39歳藤田幸仁が「もう1回」で掴んだトップリーグの舞台
トップリーグ開幕日に迎える39歳の誕生日、念願の初勝利を飾れるか
社会人として17度目のシーズンが始まるが、身体に怪我は付きものでも致命傷には至っていない。心もまだまだ元気なままだ。30歳を越えたあたりから「引退」の文字は頭の隅で見え隠れしているが、現実的な選択肢として考えたことはないという。
「僕が社会人になった時は、30歳を過ぎて現役だったら『あの人、相当長いな』と言われる時代だったんです。だから、30歳を越えたあたりから『心と身体とどっちが先にダメになるのかな』というのが、自分の中ではずっとあるんですけど、毎日『まだ大丈夫だな。体、いけるな。メンタルも大丈夫だな』と思いながら今に至っていますね。
サッカーや野球のプロ選手が引退を決めた瞬間とか、よくテレビで見るじゃないですか。あれを見ると『あ、自分にもそういう時が来るのかな?』と思うんですけど、いまだに来ないんです(笑)。中田英寿さんや新庄剛志さんみたいに、まだまだ体が動く時に辞めてしまう人もいれば、三浦カズさんのように現役を続ける人もいる。どっちがいいのかなって、ずっと考えていたら、ここまで来ていました」
ラグビーに対する基本的な姿勢は変わらず、「いつ終わってもいいように、その日の練習をちゃんとやりきろう、全力を出し切ろうと思っています」と言い切る。頑丈な身体を持っているとは言え、激しいコンタクトスポーツだけに常に怪我とは隣り合わせ。「『明日やればいい』じゃなくて、『今日ここで出し切らないと、もし明日怪我して終わったら後悔する』というのがありますね」の言葉は力強い。
今シーズン開幕を迎える1月12日は、藤田の39度目の誕生日でもある。12年ぶりに昇格したトップリーグでチームの歴史に残る「1勝目」を飾れたら、それ以上の祝福はないだろう。勝つためには何が必要なのか。そう質問すると「僕は勝ったことがないので……(笑)」とバツが悪そうに笑った。確かにトップリーグで勝った経験はないかもしれない。だが、「もう1回」と想い続け、その想いを実現させた藤田の真っ直ぐな姿にこそ、勝つためのヒントは隠されているのかもしれない。
チームにはトップリーグ経験者が増え、プロ契約選手が増えた。トップチャレンジリーグの常連になり、トップリーグを経験したチームとの対戦も重ねた。チームの底力がアップしたことは、その真っ只中で変化を感じてきた藤田が一番知っている。悲願の1勝目も「前回よりは期待できるのかなって思いますね」と、控え目ながら自信を持っている。