帰ってきた夏の高校野球の風物詩 神奈川名物「隼人園芸」に沸く球場、あちこちから「低く!」の声
第105回全国高校野球選手権・神奈川大会は8日から熱戦が繰り広げられている。「THE ANSWER」は新人カメラマンのフォトコラムを連日掲載。今回は、帰ってきた保土ヶ谷球場名物「隼人園芸」。横浜隼人の控え部員たちが腰を深く落とし、機敏に動く伝統のトンボ掛けが夏の公式戦4年ぶりに復活。球場も連日沸いている。(写真・文=THE ANSWER編集部・中戸川 知世)
THE ANSWER編集部・新人カメラマン「夏の高校野球神奈川大会フォトコラム」
第105回全国高校野球選手権・神奈川大会は8日から熱戦が繰り広げられている。「THE ANSWER」は新人カメラマンのフォトコラムを連日掲載。今回は、帰ってきた保土ヶ谷球場名物「隼人園芸」。横浜隼人の控え部員たちが腰を深く落とし、機敏に動く伝統のトンボ掛けが夏の公式戦4年ぶりに復活。球場も連日沸いている。(写真・文=THE ANSWER編集部・中戸川 知世)
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神奈川高校野球、夏の風物詩が保土ヶ谷球場に帰ってきた。
大会初日の8日、第1試合の鎌倉学園―横浜商大高戦の5回が終了すると、トンボを片手に横浜隼人の部員たちがグラウンドに現れた。「行くぞー!」。先頭に立つ2年生の声掛けで一斉に走り出す。いつからか高校野球ファンの間で「隼人園芸」と呼ばれるようになった保土ヶ谷名物が開幕だ。
「低く!」の声があちこちから響く。ベースごとに分かれ、地面と太ももが平行になるまで腰を落とし、機敏に内野の土を均していく風景は壮観。約5分間、迫力あるトンボ掛けを終えて裏に下がっていくと、3200人が集まったスタンドからは拍手が送られた。
毎年、グラウンド整備などを行う保土ヶ谷の補助員は、横浜隼人のベンチ入りしていない部員たちが担当。しかし、コロナ禍の影響で2020年以降は試合の当該校が担当していたため、同校OBによると、夏の公式戦でトンボ掛けを披露するのは、実に4年ぶりのこと。
「整備をダラダラしていると活気がない。自分たちも『沸かせよう』という気持ちでいくので、球場が沸いたら気持ち良いし、嬉しい。自信がつきます」。今年、トンボ掛けを担当している2年生の藤原雄輝、今井陽太、露木陸翔の3人は、想いを明かす。
代々受け継がれる独特なトンボ掛けは、ふくらはぎや太ももを鍛えるトレーニングの一環として始まった。12人なら4つのベース付近に3人ずつ分かれ、効率的に行う陣形も都度話し合う。新入生はしっかり股を開く独特のフォームともう一つ、ポイントを教わる。それが「低く!」の掛け声。
「なんで低くしないといけないんだろうと思わないこと。意味がないと思ってしまうと、腰が高くなる。意味があると思ってやったほうが自分の練習にもなるし、無言でやるより『低く!』と声を掛け合ったほうがやりやすい。全員でそうして整備をしていると自然と早く終わります」
そうした意識が神奈川上位常連校の強さの源であり、保土ヶ谷の試合を円滑に進める要素の一つになっている。
笑顔で飛び出してきた部員たちだったが、終盤になると苦しそうな表情を見せる者も。だが、帰る時も全力疾走で任務を全う。試合で戦っている選手にも負けない職人芸と元気で観客を魅了する「隼人園芸」。神奈川の夏も後半戦。試合に出ていない部員たちの努力にも刮目していきたい。
(THE ANSWER編集部・中戸川 知世 / Chise Nakatogawa)