フランスからの帰国子女、日本らしい部活に憧れて 慶応湘南藤沢・木原美遥マネージャーが駆ける青春
第105回全国高校野球選手権・神奈川大会は8日から熱戦が繰り広げられている。「THE ANSWER」は新人カメラマンのフォトコラムを連日掲載。今回は、慶応湘南藤沢のマネージャー・木原美遥さん(3年)。13日にサーティーフォー相模原で行われた3回戦、逆転に次ぐ逆転で10-7で生田東を下したシーソーゲーム。フランスからの帰国子女という木原さんは、記録員としてベンチから仲間を信じて勝利を見守った。(写真・文=THE ANSWER編集部・中戸川 知世)
THE ANSWER編集部・新人カメラマン「夏の高校野球神奈川大会フォトコラム」
第105回全国高校野球選手権・神奈川大会は8日から熱戦が繰り広げられている。「THE ANSWER」は新人カメラマンのフォトコラムを連日掲載。今回は、慶応湘南藤沢のマネージャー・木原美遥さん(3年)。13日にサーティーフォー相模原で行われた3回戦、逆転に次ぐ逆転で10-7で生田東を下したシーソーゲーム。フランスからの帰国子女という木原さんは、記録員としてベンチから仲間を信じて勝利を見守った。(写真・文=THE ANSWER編集部・中戸川 知世)
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スコアブックを片手に選手たちを真剣なまなざしで見守った。4度の逆転が生まれる手に汗握る展開。木原さんは点が入ったり、好守が生まれたりすると、手を叩いて喜び、すぐさまスコアブックにペンを走らせた。そんな想いに押されるようにして、慶応湘南藤沢は熱戦を制した。
「打ち合いでどっちに流れが行くか分からない展開。ドキドキしたけど、仲間を信じて見ていました」。試合前にはシートノックの補助も担当。明るい笑顔ものぞかせながら、監督に一つひとつボールを丁寧に渡していく。自分の仕事を全うする真面目な姿勢が伝わってきた。
父の仕事の関係で8歳でフランス・パリに渡り、現地の学校に在籍、中学時代は日本人学校に通った。高校進学を機に帰国し、慶応湘南藤沢へ。当初はクッキング部に入り、アルバイトや遊びを謳歌する高校生活も考えた。しかし、日本の部活特有の「青春」に憧れがあった。
「日本の友達が部活に夢中になっている姿が羨ましかった」。迷った末、高校時代に頑張ったと胸を持って言える「キツイ部活動代表」という野球部に入部を決めた。
野球が何人でやるスポーツかも知らないところからのスタート。スコアブックも先生に付きっ切りで教えてもらって覚えた。挨拶や礼儀を大切にする日本の習慣に感銘を受けたと同時に苦労も……。フランス語には敬語の概念がなく、最初は「敬語がまともに使えなかった」という。
1つ上の代にはマネージャーがおらず、不慣れなことも多い中で一つひとつ乗り越えた。大会前には1年生のマネージャーと2人で部員29個のお守りを作った。形は絵馬をイメージして「勝ちダルマ」を刺繍。辛い時もあったが、2年半一緒にやってきた仲間に「勝ってくれ!」の想いを込めた。
フランスで育ち、日本ならではの「青春」に憧れて飛び込んだ部活。7日の開会式で熱中症になり、まだ体調が万全ではない中、ベンチ入りしている。「(試合は)絶対に生で見たい。気合で!」と力強く答えた瞳に、3年間の集大成を最後まで走り切る強い意志が見えた。
(THE ANSWER編集部・中戸川 知世 / Chise Nakatogawa)