異色の7校連合が本気で目指した「夏1勝」 神奈川で奮闘、ユニホームは違っても1つになった13人の笑顔
第105回全国高校野球選手権・神奈川大会は8日から熱戦が繰り広げられている。「THE ANSWER」は新人カメラマンのフォトコラムを連日掲載。今回は、田奈・釜利谷・永谷・横浜明朋・横須賀南・海洋科学・平塚農商の7校で挑んだ連合チーム。11日に俣野公園・横浜薬大スタジアムで行われた2回戦、大師に3-13で5回途中コールド負けを喫したが、7種類のユニホームを着た13人が一つになって戦い抜いた。(写真・文=THE ANSWER編集部・中戸川 知世)
THE ANSWER編集部・新人カメラマン「夏の高校野球神奈川大会フォトコラム」
第105回全国高校野球選手権・神奈川大会は8日から熱戦が繰り広げられている。「THE ANSWER」は新人カメラマンのフォトコラムを連日掲載。今回は、田奈・釜利谷・永谷・横浜明朋・横須賀南・海洋科学・平塚農商の7校で挑んだ連合チーム。11日に俣野公園・横浜薬大スタジアムで行われた2回戦、大師に3-13で5回途中コールド負けを喫したが、7種類のユニホームを着た13人が一つになって戦い抜いた。(写真・文=THE ANSWER編集部・中戸川 知世)
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試合中のマウンド。バラバラのユニホームを着た球児たちの円陣が目に留まった。黄色のソックスが目立つが、縦縞が入っていたり、帽子が白や紺だったり。装いはさまざま。しかし、ユニホームは違っても想いは一つに、7校13人で一致団結してきた。
目標は「夏1勝」。
0-0で迎えた2回。横浜明朋の5番・恩田大地(2年)がヒットで出ると、同じく横浜明朋の諸星槇(2年)、永谷の山田翔斗(3年)が連打で続く。4校から集まった吹奏楽部の応援歌に押されるように、横須賀南の1番・斉藤豊友(2年)が2点タイムリー。別々の学校が繋いだ3得点にベンチも大いに沸いた。
もともと部員不足に悩む、近所同士の学校で生まれた連合チーム。春までは9校連合。1年生が入部した3校が単独出場を決め、夏に新たに平塚農商が加わった。海洋科学の4人が最多。横浜明朋、永谷、釜利谷が2人、田奈、平塚農商、横須賀南が1人。7校合わせても13人だけ。
各地方大会で連合チームは珍しくないが、7校もの多連合になると、そう多くはない。平日は各校で自主練習を積み、合同練習は週末のみ。その日ごと練習場を使える学校に集まる。遠ければ片道1時間半かかる選手がいるが、「行きたくない」と言う者はいなかった。
3年間、戦ったチームメートもいる。98球を力投したエースの釜利谷・亀井翔之介(3年)をリードしたのは、1年秋からバッテリーを組む田奈の羽田野純一(3年)。チーム事情で遊撃手から捕手に。「亀井の球が速いから捕るのが怖くて、初めは何回もやりたくないと思った」
田奈の選手は一人だけ。中学時代の野球部は30人いたが、今、平日の練習は一人。それでも、続けられたのは「みんなでやると楽しいから」。扇の要としての心がけは「内野集合の時に笑わせたり、リラックスさせたり会話をすること」。この日もピンチでマウンドで集まり、積極的に声をかけた。
試合は奮闘及ばず、5回コールドで敗戦。しかし、3回までは互角以上に渡り合った。7校の生徒をまとめた横浜明朋の高信智史監督は「完敗という訳ではなかった。これまで見てきた中でも、チームとしてまとまって戦えた」と労った。
羽田野は涙をこらえ、「捕手をやれて良かった。勝ちたかった」と言った。涙はそれだけ本気になった証し。野球部は引退するが、「3年生で予定を合わせて今の1、2年生の練習に顔を出せたらいいな」と言い、連合チームの絆はこれからも変わらない。
試合後の球場外、泣きじゃくる仲間を「泣くなよ~!」と他校の選手が笑顔で励ます光景があった。そして、清々しい夏の青空の下、撮らせてもらった集合写真。コミュニティが限られやすい高校生活で、他校にこんなにも磨き合える仲間がいるなんて羨ましく思えた。
(THE ANSWER編集部・中戸川 知世 / Chise Nakatogawa)