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たった10人で挑んだ一番楽しい夏 帰宅部の助っ人も参加、「9+1」で叶えた藤沢工科の5イニング

第105回全国高校野球選手権・神奈川大会は8日から熱戦が繰り広げられている。「THE ANSWER」は新人カメラマンのフォトコラムを連日掲載。今回は、わずか10人で挑んだ藤沢工科。9日に俣野公園・横浜薬大スタジアムで行われた1回戦、上矢部に0-10で5回途中コールド負けを喫したが、助っ人の力を借りた単独出場で完全燃焼した。(写真・文=THE ANSWER編集部・中戸川 知世)

試合前の整列、20人の上矢部に対し、10人の藤沢工科の列の短さが際立った【写真:中戸川知世】
試合前の整列、20人の上矢部に対し、10人の藤沢工科の列の短さが際立った【写真:中戸川知世】

THE ANSWER編集部・新人カメラマン「夏の高校野球神奈川大会フォトコラム」

 第105回全国高校野球選手権・神奈川大会は8日から熱戦が繰り広げられている。「THE ANSWER」は新人カメラマンのフォトコラムを連日掲載。今回は、わずか10人で挑んだ藤沢工科。9日に俣野公園・横浜薬大スタジアムで行われた1回戦、上矢部に0-10で5回途中コールド負けを喫したが、助っ人の力を借りた単独出場で完全燃焼した。(写真・文=THE ANSWER編集部・中戸川 知世)

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 試合前。ホーム付近に両校の選手が整列した。20人の上矢部に対し、10人の藤沢工科。ちょうど半分。ファインダー越しに見る列は、思ったより短い。そんなハンデはお構いなしに、選手たちはグラウンドを駆け回った。

「9+1」で挑んだ5イニングの夏だった。

 1勝して3回戦進出した昨夏以降、3年生が引退し、部員不足に。秋は棄権し、春は深沢と合同チームで出場した。練習は教員も参加して穴を埋め、試合は野手も登板に備えて肩を作ったり、ランナーコーチは順番で回したり、負担は多い。

 ただ、7人いる3年生にとって最後の夏。エースで主将の唐川将輔(3年)は思った。「最後の大会は、自分たちの名前で出たい」。春に1年生2人が入部したものの、9人ギリギリ。1人でも欠ければ棄権のリスクはあったが、最上級生で話し合って単独出場を決めた。

 実際、1年生の外園凱都が足を怪我し、夏に間に合わないピンチもあった。棄権だけは避けようと、唐川は野球経験者4、5人に声をかけて助っ人を勧誘。そのうちの一人が、部活に所属していない内山詩音(3年)だ。中学1年の途中まで野球をしていた。

 1年の頃から「来てくれ」と誘ってはいたが、工科高校には資格試験もある。勉強優先の内山に対し、「押し付けるのは悪い」と遠慮しがちだった。それでも、最後の夏――。粘って何度も声をかけた。大会1か月前に了承してくれた。

 3週間前から参加し、懸命に練習。追加登録した内山を含めた10人で大会に臨んだ。

 試合は0-10でコールド負け。しかし、高校野球には、勝ち負けより大切なものがある。

「7番・二塁」で出場した内山は2打数2三振に終わったものの、顧問から借りたユニホームでフル出場。「唐川は誘ってくれて、キャプテンらしかった。明日から就職活動が始まるので、気持ちをそれに向けていきます」と感謝を胸に、短い夏を力に変える。

 最後までマウンドを譲らず、109球を投げた唐川は「内山もきっと野球は好きだと思う。一緒にできて良かった。今日が一番楽しかったです」と言った。

コールド負けした試合後、整列した選手たちには完全燃焼した笑顔があった【写真:中戸川知世】
コールド負けした試合後、整列した選手たちには完全燃焼した笑顔があった【写真:中戸川知世】

 試合後。ベンチ前に並んで相手の校歌を聞く選手たちには、完全燃焼した笑顔があった。野球を心から楽しむ10人の高校生がキラキラと輝いて見えた。

(THE ANSWER編集部・中戸川 知世 / Chise Nakatogawa)

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