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五輪に「見てくれる人に感動を」は無くていい 聖人化するアスリート、過度に清く正しくが求められる理由――陸上・為末大

スポーツ文化・育成&総合ニュースサイト「THE ANSWER」はパリ五輪期間中、「シン・オリンピックのミカタ」と題した特集を連日展開。これまでの五輪で好評だった「オリンピックのミカタ」をスケールアップさせ、大のスポーツファンも、4年に一度だけスポーツを観る人も、五輪をもっと楽しみ、もっと学べる“見方”をさまざまな角度から伝えていく。「社会の縮図」とも言われるスポーツの魅力や価値が社会に根付き、スポーツの未来がより明るくなることを願って――。

為末大さんが見た「2024年のスポーツ」の現在地とは【写真:Getty Images】
為末大さんが見た「2024年のスポーツ」の現在地とは【写真:Getty Images】

「シン・オリンピックのミカタ」#96 連載「なぜ、人はスポーツをするのか」第5回・後編

 スポーツ文化・育成&総合ニュースサイト「THE ANSWER」はパリ五輪期間中、「シン・オリンピックのミカタ」と題した特集を連日展開。これまでの五輪で好評だった「オリンピックのミカタ」をスケールアップさせ、大のスポーツファンも、4年に一度だけスポーツを観る人も、五輪をもっと楽しみ、もっと学べる“見方”をさまざまな角度から伝えていく。「社会の縮図」とも言われるスポーツの魅力や価値が社会に根付き、スポーツの未来がより明るくなることを願って――。

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 今回は連載「なぜ、人はスポーツをするのか」。現役アスリートやOB・OG、指導者、学者などが登場し、なぜスポーツは社会に必要なのか、スポーツは人をどう幸せにするのか、根源的価値を問う。第5回は陸上400メートル障害でシドニー、アテネ、北京の五輪3大会に出場した為末大さん。引退後は「スポーツで社会を良くする」を目指し、さまざまなステージで活躍。そんな為末さんとスポーツの意義について考える。(前後編の後編、取材・構成=THE ANSWER編集部・神原 英彰)

 ◇ ◇ ◇

 パリ五輪が行われる「2024年のスポーツ」の現在地を考えてみます。

 1990年から2024年までの大きな流れで見ると、オリンピックは別ですが、スポーツは「短時間化、少人数化」が起きていると感じます。バスケットボールに3人制ができたり、サッカーにフットサルができたり。過去は大規模に動員ができることを前提にしていましたが、小さいものが好まれるようになりました。

 それは非スタジアム化が進み、スタジアム外で行うスポーツが増えているから。スタジアムの外に出ると自然環境により、同じ条件が作りにくい。サーフィンなら、例えば、1人前の波と今の波どちらが大きいのか。それをコントロールできないと不公平と思われますが、「それも勝負のうち」という考え方が今のスポーツの潮流です。

 もう一つ、科学が進むと、何歳の時点でどんな経験をしたら、どの程度のパフォーマンスができるのかという計算式が出始める。もちろん、まだ分からないことも多いですが、そういうものがあると、スポーツがつまらなくなる可能性がある。生まれや幼少期の環境だけで決まるんでしょ、と。田舎町から現れた選手が大舞台で活躍できるストーリーが面白かったのですが、そういうものがなくなっていくかもしれない。

 また、アスリートが聖人かのように、過度に清く正しくいなければいけない風潮も感じます。これはスポーツ界がブランディングしたところもある気がしますが。「スポーツをすると良い人になれる」という風潮を作ってしまったことで、揺り戻しが来ている気がします。その人自身の内側にある活力を引き出すことがスポーツの意味合いであると思います。

 最近、アスリートの皆さんは「見てくれる人に感動を」という話をよくされますが、まずはどうかご自身の一生懸命やってきたことを、存分に花開かせてください。社会の側があなたのメッセージを勝手に読み取りますから、というのが正直な想いです。

 なぜなら、社会の要請に応じて、スポーツは出来上がっているから。世の中にいろんな大事なものがある中で、どう強化してトップ選手を作っていくか、そのプロセスに教育的効果があるなどと合意がなされていて作られたので。そのプロセスを正当に歩んできた選手であれば、「どうぞご自由に」と思うのです。

 なので、もし本当に発信したいならいいと思うのですが、義務的に社会的意義を発信しなくてもいいのではないか。環境問題とか国と国の関係とか、正しいことを言える発信力があるのですが、一方で、もっと自分を解放して、命を燃やしている姿が社会にとってみると、すごく重要なのではないかとも思います。

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