南アフリカが実現させた「虹の国」の形 違いを超え、団結した力から得る学び
9月20日に開幕し、44日間続いたラグビーワールドカップ(W杯)日本大会は2日、南アフリカが3大会ぶり3度目の優勝を飾り、幕を閉じた。4年に一度の祭典。世界最強の称号を得るために、家族と過ごす時間を削り、体を極限まで追い込んできた男たちが、ノーサイドの瞬間、涙を流しながらも解き放たれた笑顔を浮かべた姿が印象的だった。
南ア代表初の黒人主将コリシ、幼い頃は明日の食べ物にも困窮
9月20日に開幕し、44日間続いたラグビーワールドカップ(W杯)日本大会は2日、南アフリカが3大会ぶり3度目の優勝を飾り、幕を閉じた。4年に一度の祭典。世界最強の称号を得るために、家族と過ごす時間を削り、体を極限まで追い込んできた男たちが、ノーサイドの瞬間、涙を流しながらも解き放たれた笑顔を浮かべた姿が印象的だった。
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今大会に出場した20チームには、それぞれ物語がある。今年だけでも240日の合宿を行い、史上初のベスト8入りを果たした日本。記念すべきW杯初勝利を目指した、人口約253万人のアフリカの小国・ナミビア。史上初W杯3連覇を目指したニュージーランド。そして、優勝を果たした南アフリカもその例外ではない。南アフリカ3度目の優勝は、過去2回と何が違ったのか。それは同国代表では初の黒人主将を擁したことだろう。
南アフリカはかつて、アパルトヘイトと呼ばれる人種隔離政策が行われ、白人と有色人種を「分離・分割」して統治していた。世界的な批判を受けた同制度は、1994年の全人種による初の総選挙でネルソン・マンデラ氏が大統領に就任した後に撤廃され、南アフリカは差別のない人種融合の道を歩み出した。だが、現実には25年が経過した今でも、人種差別や人種間格差は根強く残っているという。
そういう背景もあり、主将に黒人選手のシヤ・コリシが選ばれることは極めて異例だった。コリシを主将に指名したラッシー・エラスムス・ヘッドコーチ(HC)は試合後の記者会見で、感慨深げな表情を浮かべ、時折横に座るコリシを見ながら言った。
「辛い時間を過ごしたり、チャンスを手にする苦しさを味わったり、そういう経験を話すことは簡単だ。だが、実際に食べ物に事欠き、学校にも通えず、履く靴もない状況に置かれるほどタフなことはない。だが、シヤには食べる物がない時があった。そして今、そう、南アフリカを優勝カップへ導いたキャプテンは、このシヤなんだ」