就任から618日でW杯優勝へ 南アフリカ、エラスムスHCに学ぶ人心掌握術とは
多くの選手が口を揃えるエラスムスHCの性格とは…
そして、選手たちがエラスムスHCについて声を揃えるのは「常に裏表なく、正直な意見や気持ちを投げかけてくる」という点だ。SHファフ・デクラークはこう言う。
【特集】“欽ちゃん球団監督”片岡安祐美の今 2度の流産を経て母に…思春期の後悔「生理に見て見ぬふりを」
(W-ANS ACADEMYへ)
「閉ざされた空間の中で何かが起こるということはない。話し合いは風通しのいいものだし、何よりもプランに自信を持っていた。おかげで全員が達成したい目標を共通認識として持てていた」
決勝に途中出場し、勝敗を分けるカギとなったスクラムの安定性を継続させたPRスティーブン・キツホフも「ラシーは本当に正直で率直なコーチなんだ」と続ける。具体的には、どんな正直な意見を選手にぶつけたのか。主将コリシは初めてのミーティングの話を披露した。
「初めてのミーティングはヨハネスブルグであった。その時、ラシーは真っ直ぐに、私たちが選手として何をしているのか、ありのままを伝えてくれた、大金をもらいながら、フィールド外のことに意識が向いているって。私たちはラグビーを第一に考えていなかったんだ」
選手たちに現実と向き合うように促したエラスムスHCは、続けて選手としてあるべき姿について語ったという。
「私たちは変わらなければならない、と言われたんだ。スプリングボクスでの目標達成は、個人の目標よりも重要だ。なぜなら、試合を見に来てくれるファンは、わざわざ稼いだ金を使ってチケットを買っている。だから、まず私たちの心構えを変えなければならないって。そこからはSNSで長時間過ごすのではなく、グラウンド内での出来事に全身全霊を注ぐようになった。自分の立ち位置を理解できるようになったんだ」
明確な目標を立てること、正直で風通しよくあること、小さな成功体験を繰り返しながら自信を深めること、互いを信じ合うこと。南アフリカを12年ぶりの世界一へと導いたエラスムスHCの手法は、シンプルで理解しやすい。スポーツに限らず、様々なシーンで活用することができそうだ。
(THE ANSWER編集部・佐藤 直子 / Naoko Sato)