東京に響いた「ナミビア」コール “小国”が最強NZに挑み、日本ファンを惚れさせた
沸き起こった「ナミビア」コール、選手はその声をどう聞いていたのか
「本当に選手たちを誇りに思う。努力を惜しまず、出してくれた。世界でベストのチームとの対戦で、これ以上できないくらいにやってくれた。スコアボードを見れば、ひもじいものあるが、我々は多くのことを学ぶことができた」
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実際、ナミビアラグビーはW杯出場国でありながら、現実は厳しい。人口約253万人のアフリカの小国。代表の6~7割がアマチュアもしくはセミプロ選手で、正社員として9時から17時まで就業したり、学生として勉学に励んだりしている。朝、夜に本業の傍らで競技と向き合い、世界ランク23位は今大会で最下位というのが、実情である。
そんなメンバーが押しも押されもしない世界最強軍団と戦い、前半30分まで互角に渡り合ったのだから価値はある。NO8フェンターは「ナミビアの歴史で一番かはわからないけど、僕にとっては一番いい試合ができた30分だった。ナミビアで競技が盛んになり、強いチームと戦う機会が増えれば、トップ10に勝てるチームに仕上がっていくと思う」とさらなる成長を誓った。
こうしたバックボーンを持った選手たちの闘志が観る者の心を打った。だからこそ、大差がついても実際に戦った選手たちに「ナミビア」コールをはじめ、会場の空気をどう感じたのか、気になった。フェンターに「スタンドから送られていた日本の歓声は、あなたの耳にどう聞こえていましたか」と聞くと、こんな答えが返ってきた。
「こうしてサポートしてくれるのは光栄なことだった。前評判では明らかに僕らが負けると思われていた。ただ、僕らの戦う姿勢を見て、観客が声援をくれたことがいいパフォーマンスにつながったんだ」
3本のPGを決めたスティーブンスも、客席の雰囲気について「本当に素晴らしかった。ナミビアではこのようなスタジアムでプレーする機会はなかなかない。素晴らしい声援、サポートの空気を感じた」と感謝。日本の声援に恩返しするためにも、まずは今大会最終戦のカナダ戦でナミビアにとって初のW杯勝利を狙う。
日本もかつて95年南アフリカ大会のニュージーランド戦で17-145という今も残るW杯史上最多失点の敗戦から立ち上がり、前回15年は南アフリカを、今回はアイルランドを破り、世界を驚かせる存在にまで成長した。世界1位の強豪と本気でぶつかり、日本のファンを魅了した80分間はナミビアラグビーにとって、大きなターニングポイントになる可能性を秘めている。
そして、それは「ティア1」を中心に回るラグビー界を活性化させ、発展させていくことと同義だ。スティーブンスは、にこやかに言った。「W杯に出ること自体が僕らにとっては凄いこと。(大会で経験したことを)1週ごとに改善していける。この後は成長あるのみだよ」――。
(THE ANSWER編集部・神原 英彰 / Hideaki Kanbara)