南北の違いを越えて1つに… アイルランド代表アンセム「Ireland’s Call」の意味
ラグビーワールドカップ(W杯)日本大会は開幕から1週間が過ぎ、連日の熱戦で大いなる盛り上がりを見せている。20日に行われた開幕戦でロシアに勝利した日本代表は28日、世界ランク2位アイルランドと静岡で激突。厳しい総力戦は必至だが、この試合に勝てば目標に掲げる決勝トーナメント進出はグンと近づく。
アイルランド共和国と英領北アイルランドが1つになった「統一」チーム
ラグビーワールドカップ(W杯)日本大会は開幕から1週間が過ぎ、連日の熱戦で大いなる盛り上がりを見せている。20日に行われた開幕戦でロシアに勝利した日本代表は28日、世界ランク2位アイルランドと静岡で激突。厳しい総力戦は必至だが、この試合に勝てば目標に掲げる決勝トーナメント進出はグンと近づく。
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優勝候補の一角に挙げられるアイルランドは、アイルランド共和国とイギリス領北アイルランドが一体となった統一チームだ。アイルランドは元々、グレートブリテン島の西に位置するアイルランド島にある1つの国だった。だが、カトリック教徒の多い南部とプロテスタントの多い北部とで、長きにわたり宗教的・政治的な紛争を繰り返し、内戦に発展。1922年に南部はアイルランド自由国として分裂し、1938年にはイギリスが徳利を承認、1949年にイギリス連邦から離れ、アイルランド共和国として完全に独立した。
ベルファストを中心とする北部は、北アイルランドとしてイギリス統治下に残ったものの、南部とのわだかまりは消えず。1998年に北アイルランド和平合意が成立した後も、アイルランドと北アイルランドでは互いに敵対感情を抱いている人は多い。
そんな宗教的・政治的混乱がある中でも、ずっと1つであり続けたのが、ラグビー代表チームだ。1879年に発足したアイルランドラグビー協会は、南北が分裂した後も両地域からメンバーを招集。「統一アイルランド」として国際大会に出場している。もちろん、内紛の影響を受けなかったわけではない。1987年に行われた第1回W杯の直前には、北アイルランドの3選手を乗せた車が爆破テロに巻き込まれ、うち1人は選手生命を絶たれる悲劇も起きた。それでも主義主張の違う者同士が集まる代表チーム内で問題が起きたという話は聞こえてこない。
もちろん、不都合が生じないわけではない。その最たるものが、代表戦の前に行われる国歌斉唱だ。アイルランド共和国は「Amhran na bhFiann(兵士の歌)」という国歌を持つが、北アイルランドはイギリスの「God Save the Queen」が国歌。両方を歌うわけにもいかず、1995年に作られたのがラグビー代表チーム歌「Ireland’s Call(アイルランドの叫び)」だ。現在、アイルランド共和国国内で行われる試合では「兵士の歌」と「Ireland’s Call」の両方を歌い、国外での試合には「Ireland’s Call」をアンセムとして用いる。