際立つドラフトの残酷さ Wドラ1誕生→指名漏れ…部屋に漂った重い空気、“たった10m”で明暗
同じ空間でドラフトの残酷さが際立っていた。プロ野球ドラフト会議が23日に都内で行われ、東都大学リーグの青学大は1位指名で中西聖輝投手が中日に、小田康一郎内野手がDeNAに名前を呼ばれた一方、ヴァデルナ・フェルガス投手は最後まで呼ばれず、指名漏れとなった。一昨年、昨年と大学選手権を連覇した名門・青学大で分かれた明暗。複雑な感情に揺れる現場では祈りにも似た様々な声が漏れ聞こえた。

2025年プロ野球ドラフト会議
同じ空間でドラフトの残酷さが際立っていた。プロ野球ドラフト会議が23日に都内で行われ、東都大学リーグの青学大は1位指名で中西聖輝投手が中日に、小田康一郎内野手がDeNAに名前を呼ばれた一方、ヴァデルナ・フェルガス投手は最後まで呼ばれず、指名漏れとなった。一昨年、昨年と大学選手権を連覇した名門・青学大で分かれた明暗。複雑な感情に揺れる現場では祈りにも似た様々な声が漏れ聞こえた。
午後4時39分。ヴァデルナは中西、小田とともに東京・渋谷区の同大キャンパス内の会見場に入った。20分後にまず中西が中日から1位指名を受け、さらに18分後には小田がDeNAの外れ1位で名前を呼ばれた。「おおー!」と歓喜に包まれる中、ヴァデルナはネクタイをいじりながら「はぁ~」とため息。2人が壇上に上がって約1時間会見に応じる間も、10メートルほど離れた部屋の一角で祈るようにテレビを見つめ続けた。
「阪神あります。まだ左ピッチャー獲ってないです」
続々と選択希望選手が読み上げられていく中、焦りを見せるヴァデルナに後輩から声が飛んだ。身長189センチの長身サイド左腕はテレビの目の前に座り、画面を凝視。直後に阪神が別の選手を指名すると「全然ちゃうやん」と明るく言い放ち、笑いを誘った。名前がカタカナの選手が画面に表示されるたびに周りを取り囲むチームメートが一瞬ざわつく。本人の目は徐々に赤くなっていった。
両手で頭を抱えたり、口を覆ったり、机に突っ伏したりと落ち着かない様子。会見中だった中西と小田も気が気でないようで、ヴァデルナの近くにいるチームメートに「呼ばれた?」「何巡目?」などと口パクで確認していた。そばにいる仲間からは「まだ間に合う」とのエールも。しかし、無情にも「選択終了」を宣言するチームが続くと、「うわぁ」「やばい」といったつぶやきが漏れ聞こえた。
全球団の支配下指名が終わったのは午後7時3分。皮肉にもチアリーダーらが中西と小田を取り囲み、テレビカメラに向かって「ドラ1おめでとう!」とポンポンを振った直後だった。両手で顔を覆ったヴァデルナは1人席を立って会場外へ。祝福ムードから一転、会場には重たい空気が流れた。3分後に戻ってきたヴァデルナは「明日優勝しよう!」と手を叩きながら仲間を鼓舞し、気丈に振る舞った。
育成指名が始まってからは会見を終えた中西と小田もヴァデルナの横に座り、一緒にテレビを見守った。「選択終了」をコールする球団が出始め、「いやぁ~」と俯くヴァデルナ。中西はすぐさま「諦めるな」と同僚の太ももを叩き、励ました。
だが、8時5分に全球団が指名終了。「あぁ~」と悲嘆の声が響いた。打ち破ったのはヴァデルナ本人。悔しそうに一瞬俯いたものの、すぐに立ち上がって「明日勝とう、明日勝とう」と手を叩き、翌日のリーグ戦に向けて気持ちを切り替えようとしていた。涙を押し殺しながら、再び1人で扉の向こうへ。残された部員たちは複雑な感情を抱えつつ、予定通りドラ1の2人を胴上げした。
(THE ANSWER編集部・鉾久 真大 / Masahiro Muku)
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