井上の“人生初”にも冷静だった陣営

　ボクシングの世界スーパーバンタム級4団体統一王者・井上尚弥（大橋）の逆転勝利につながった“もう一人の立役者”が海外で注目されている。6日に東京ドームで元世界2階級制覇王者ルイス・ネリ（メキシコ）に6回1分22秒TKO勝ち。初回にダウンを喫する衝撃の幕開けだったが、そこから立て直した立ち回りについて、海外で元世界王者ら数々の選手を指導してきた名伯楽は自らの経験を踏まえ「とても頭が切れる」と絶賛している。

　3度のダウンを奪う逆転TKOで世界に強さを誇示し、東京Dに集まった4万3000人を熱狂させた井上。4団体統一王座防衛の成功を受け、ノニト・ドネアら数々の選手を指導してきた名トレーナーで、元IBF世界スーパーフェザー級王者のロベルト・ガルシア氏は自身のYouTubeチャンネルで戦いぶりに言及したが、井上と同等の賛辞を送ったのはトレーナーで父の真吾さんだった。

　ネリ戦の最大のポイントとも言っていい初回のダウン。ガルシア氏は「キャリア初のダウンに対して、立ち上がるのにきちんと時間をおいていた姿を見るに、彼はとても賢く、何事にも準備ができているボクサーだと言うことが分かる」と井上の冷静な振る舞いに注目した。一方で「トレーナーである父親とも、こういった状況について話し合っていたのだろう。私はトレーナーとしてボクサーに、『倒れたらすぐに起き上がろうとするな。すでにそのラウンドは落としたのだから』と伝えるようにしているんだ」と自らの経験と重ね合わせた。

　もちろん、それをすぐに実践できるのも井上のトレーニングの賜物。「イノウエはダウンを経験したことがあるかのように振る舞っていた。立ち上がった後も少し効いていたのは見て分かったよ。彼はそこで“勇敢な男”にはなろうとしなかった。賢いボクシングだった」と称賛したうえで、「今まで起きたことがなかったけど、それも想定していたのだろう。とても頭の切れるトレーナーだよ」と真吾トレーナーの指導についても高く評価している。