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涙のKO勝ち井上拓真、兄・尚弥の存在に葛藤「偉大な兄と比べられる。兄弟である以上は自分もと思ってた」

ボクシングのトリプル世界戦が24日、東京・両国国技館で行われ、メインイベントのWBA世界バンタム級(53.5キロ以下)王者・井上拓真(大橋)が挑戦者の同級9位ジェルウィン・アンカハス(フィリピン)に9回44秒KO勝ちした。昨年4月に王座を獲得し、今回が初防衛戦。兄・尚弥もリングサイドで見守る中、戦国時代と化したタレント揃いのバンタム級を戦い抜いた。戦績は28歳の拓真が19勝(5KO)1敗、32歳のアンカハスが34勝(23KO)4敗2分。

ジェルウィン・アンカハスを下し会見に登場した井上拓真【写真:山口比佐夫】
ジェルウィン・アンカハスを下し会見に登場した井上拓真【写真:山口比佐夫】

WBA世界バンタム級タイトルマッチ12回戦

 ボクシングのトリプル世界戦が24日、東京・両国国技館で行われ、メインイベントのWBA世界バンタム級(53.5キロ以下)王者・井上拓真(大橋)が挑戦者の同級9位ジェルウィン・アンカハス(フィリピン)に9回44秒KO勝ちした。昨年4月に王座を獲得し、今回が初防衛戦。兄・尚弥もリングサイドで見守る中、戦国時代と化したタレント揃いのバンタム級を戦い抜いた。戦績は28歳の拓真が19勝(5KO)1敗、32歳のアンカハスが34勝(23KO)4敗2分。


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 拳が激しく交錯する試合になった。拓真が挑戦者の圧力をいなす展開。的確にパンチを返していった。中盤は足を止めて打ち合う場面も。決着は9回、接近戦からえぐるように右ボディーを突き刺した。一瞬だけ間をおいてアンカハスが崩れ落ちる。10カウントが取られ、KO勝ちが決まった。雄叫びとともにガッツポーズ。コーナーにのぼった。勝ち名乗りを受ける時には涙。顔をくしゃくしゃにした。

 2階級4団体統一を果たした尚弥を兄に持つ拓真は、昨年4月に兄が4団体統一後に返上したWBA王座を獲得。今回はメインイベントを任された。デビューから変わらず強敵との対戦を求め続け、「過去イチの強敵」とIBF世界スーパーフライ級王座9度防衛を誇るアンカハスとの対戦が実現。当初は昨年11月に開催予定だったが、自身の肋骨骨折で延期に。1か月のリハビリ期間を経て大一番を迎えた。

 バンタム級は戦国時代だ。この日のセミファイナルでWBC王座を奪取した中谷潤人のほか、IBFはエマヌエル・ロドリゲス、WBOはジェイソン・マロニーが王座を保持。さらに比嘉大吾、堤聖也、栗原慶太、石田匠、西田凌佑、武居由樹、那須川天心と日本人7人が世界ランカーに名を連ねる。元5階級制覇王者ノニト・ドネア(フィリピン)の動向も気がかり。今後の世界戦線にも注目が集まる。

 この日はセミファイナルでWBC世界バンタム級1位・中谷潤人(M.T)が、王者アレハンドロ・サンティアゴ(メキシコ)から同級王座を奪取して3階級制覇。WBO世界スーパーフライ級王座決定戦でも、同級1位・田中恒成(畑中)が同級2位クリスチャン・バカセグア(メキシコ)に勝利を収め、4階級制覇を達成した。

 拓真の会見は以下の通り。

――試合を振り返って。

「過去イチの相手。初のメインイベンターとして良い内容、良い結果で終われてホッとしています」

――当てても当てても、相手は前に出てきた。

「相手が前に出てくるのは想定はしていたけど、あそこで足を使ってポイントアウトすることもできたし、でもそうなるといつもの自分のつまらない試合になる。あそこは打ち勝てたので、凄く今後の自信になりました」

――ボディーで決めた。

「練習の時から父に『くっついたらボディーだ、ボディーだ』と耳にタコができるくらい言われていた。きつい練習だったけど、してきた効果が出た。効いているのはわかっていたので、ボディーを入れていった中での一発だった」

――打ち合いもあった。

「ダメージは耐えられるくらい。我慢比べ。どっちが我慢強いかの試合だった。打ち勝ててよかった」

――リングでは不安も口にした。

「相手は9回防衛してきた名王者。自分はチャンピオンになったばかりの新人。自分が王者ですけど、挑戦する気持ちでずっと練習してきた。その名王者にどれくらい自分が通用するか、試合が始まらないとわからない状態だった。その相手に勝てて自信になりました。不安な時こそ練習で、練習量で消すしかない。一番コンディションがよかったし、最後までしっかり練習できて、内容にも一番自信を持てた」

――スタイルを変えるきっかけは。

「(昨年4月の前戦の)ソリス戦も足を使う一定の内容。見ている人も退屈だったと思う。山場を作りたいし、見ている人がおっと思うような試合をしたい。偉大な兄と比べられる。兄弟である以上は自分も盛り上げる試合をしたいとずっと思っていた。強豪相手に(スタイルを)変える試合ができてよかった。ここまで接近戦でやるつもりはなかったけど、試合を通して山場をつくることはやってきた。

 自分のスタイルにないものを取り入れる。井上拓真のボクシングを完成させるにはアウトボクシングだけではなく、いろんなものを取り入れる。基本的なスタイルは変わらないけど、その中でどうするか」

――打ち合いの心境は。

「打ち合いは過去にそんなにないけど、今回は強い相手にこんだけ打ち合いをできているという楽しさがありました。ボディーも左フックも入っていた。相手もダメージを負っているなと感じた。その中でスタミナを削るという作戦の中で効いてよかった」

――大橋秀行会長、父・真吾トレーナーの評価は。

大橋会長「今日は兄貴を超えたなという感じですかね」

真吾トレーナー「内容はよかったけど、自分は教える立場なので課題もある。いろんな面で手応えがある。でも、今日は凄く内容もいい試合でした」

――大橋会長、今回相手がアンカハスになって期待した部分。

大橋会長「常に強敵と戦うこと。アンカハス以外にいない。過去イチの強豪だったと思うけど、拓真にとっても過去イチの出来。パンチもあるし、強振するし、怖い選手だったけど、それで打ち合って勝ったことに意味がある。新しい井上拓真が誕生したなと思う。次は石田匠と指名試合。怪我もないので尚弥と同じ日の試合になると思う。兄弟そろってそういう試合を見せてくれると思う」

――今後へ。

「4団体統一を掲げている以上、一度も負けられない重圧もある。その中で勝ち続けるのが大事。一歩、一歩勝ち続けたい」

――今日のセミファイナルの中谷潤人も含め、バンタム級は強豪ぞろい。

「互いに勝ち続ければいつかは当たる。その日が来るまで負けずに勝ち続けたい」

――試合前に尚弥からアドバイスは。

「いつもですが、とりあえず集中、自分の距離を作れと。基本的なことを言ってもらってます」

――会長が言った「兄を超えた」ということについて。

「今日限りは超えたって言っていいんですかね(笑)。そう言ってもらえると嬉しいです」

――真吾トレーナー、進化したところは。

真吾トレーナー「その意識で練習していた。スパーでも外すだけじゃなく、外したらしっかり返す。それを意識、意識、意識でやってきた。いろんな幅が出てきたなと」

(THE ANSWER編集部)





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