B1連覇時の“嫌らしさ”復活 アルバルク東京、「20勝一番乗り」に導いたベンチメンバーの奮闘
際立ったベンチメンバーの集中力
今季のA東京は、これまでの大黒柱だった田中大貴がサンロッカーズ渋谷へ移籍した一方で、テーブスや橋本、福澤晃平といった新戦力を迎え、目まぐるしい速さでチームの融合を進めている。試合後の囲み取材で、キャプテンのザック・バランスキーにチームの融合度について問いかけたところ、A東京の土台の強さを感じるような言葉が返ってきた。
「キャプテンである僕がどうこうするというより、チームのみんながしっかりと、コート内でもコート外でもコミュニケーションを取っています。僕が英語でも日本語でも話せるというところもあって、『つなぎ役』や『通訳』じゃないですけれども、いろいろと話したり、加入当初から溶け込めるようにしたりしています。コミュニケーションが取れているからこそ、コート上でのコンビネーションが上手くいっているのかなと感じています」
さらにこの試合で際立ったのが、ベンチから投入されたメンバーたちの集中力の高さだった。この試合でA東京が喫したターンオーバーは12本を数えたが、このうちベンチメンバーでターンオーバーを記録したのは小酒部のみ。代わった選手たちがしっかりと局面をつないでいくだけでなく、時には大きく流れを呼び込むプレーも見せていく。この試合で自らも10得点を挙げたバランスキーは、ベンチメンバーによる打開について、このように持論を述べている。
「スタートであっても、ベンチであっても、うちのチームにはあまり関係がない、実力は誰が出ても変わらないと思います。ベンチから出るメンバーは、試合を見ている中で『今、どういった状況か』というのが見られるからこそ、みんながやることを分かっていると思います。試合に出ていないメンバーもしっかりコミュニケーションを取って、いつでもみんなが準備をしているわけで、そういった部分が良い方向に表れていると感じます。僕はずっと『出た場面でチームに貢献する』という意識を持っている中で、逆にベンチから出てきて『あいつ、面倒だな』と思われるぐらいが、個人的には好きなので(笑)。チームにより良い勢いを与えられたのなら、良い仕事ができたとも思います」
アドマイティス体制の2季目を迎えたA東京は、理詰めで作り上げる部分と感性に頼っていく部分と、ともすれば相反するような要素を組み合わせて戦っているようにも映る。バランスキーも、指揮官の展開するバスケットの勘どころについて「『ここは徹底してくれ』とする部分をやりきれば、あとはコート内を信頼して任せてくれるし、やりやすいところはある」と、信頼の一端を覗かせた。
2連戦の2戦目となった24日の試合では名古屋Dの逆襲を許し、59-82で敗れ、連勝は「6」でストップとなってしまう。だが、4シーズンぶりとなるB1制覇に向けて、チームの一体感、戦術理解度の高さは大きな武器であり続けるはず。かつてのBリーグ連覇時代に見られた「アルバルクの嫌らしさ」は、今後も随所で見られることだろう。
(荒 大 / Masaru Ara)