初Vの桃田賢斗が東京で見せたかったものは? 「一球一球に必死で食らいついている」
桃田が本当に見せたかったものとは?
プレーにも変化が生まれた。桃田の持ち味は、シャトルのコントロール力。特に繊細なタッチが必要になる、ネット前へ落とす球に自信を持っている。しかし、以前は、フィジカル能力を前面に出されたり、粘り強さが必要な試合になったりすると競り負ける部分があった。しかし、復帰後は我慢強いラリーが可能になり、粘り強く次のチャンスをうかがえるようになった。
コート内外で示すものが、処分の前後で大きく変わった。処分を受ける前の2015年にスーパーシリーズ・ファイナルズ(現ワールドツアー・ファイナルズ)を優勝した際は、サッカー選手や野球選手のような派手で憧れの存在になりたいという主旨の発言をしていたが、今大会では別の形で見せたいものがあった。
「ジュニア(世代)の選手たちは、SNSや動画サイトでトッププレーヤーの格好良いプレーしか見ていないと思うけど、東京で開催される大会で、みんな一球一球に必死に食らいついているところを見てもらえたと思う。東京で開催される試合には、そういう意味もあると思うので、優勝できて良かった」
会心の勝利と、改心の証。満席の会場で見せたかったものは、優勝だけでなく、地味な一球の大切さも見せるための一歩、一振りだった。
(平野 貴也 / Takaya Hirano)