イ・ボミ、大雨でもついてきた観衆に感謝「皆さんの顔を見ながら回った」 今は「ゆっくり寝たい(笑)」
女子ゴルフの国内ツアー・NOBUTA GROUP マスターズGCレディース第2日が20日、兵庫・マスターズGC(6495ヤード、パー72)で行われた。107位で出た韓国の2015、16年賞金女王イ・ボミ(延田グループ)は2バーディー、2ボギーの72で回り、通算11オーバーの99位で予選落ち。一時代を築いた35歳が日本のツアー生活に別れを告げた。
NOBUTA GROUP マスターズGCレディース第2日
女子ゴルフの国内ツアー・NOBUTA GROUP マスターズGCレディース第2日が20日、兵庫・マスターズGC(6495ヤード、パー72)で行われた。107位で出た韓国の2015、16年賞金女王イ・ボミ(延田グループ)は2バーディー、2ボギーの72で回り、通算11オーバーの99位で予選落ち。一時代を築いた35歳が日本のツアー生活に別れを告げた。
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スタート前から感情を堪えきれなかった。平日にもかかわらず大ギャラリーが集結。ボミが練習グリーンから1番ティーグラウンドに向かう途中、ファンが花道をつくった。初日は日本ツアー自己ワーストとなる11オーバーの83。予選落ちなら最後になる18ホール。「ファイティーン!」「頑張れー!」。感極まった元賞金女王の頬からは、早くも涙がこぼれ落ちた。
タオルやTシャツでイメージカラーのピンクに染まった人の群れ。約1000人が取り囲んだ1番パー5の第1打は、フェアウェーに転がった。着弾地点へ歩き出すと、「ボミちゃん、ありがとー!」の声も。主役の涙は止まらない。同組の上田桃子、小祝さくらもピンクのウェアで合わせる粋な計らい。1打ごとに大きな拍手が注がれた。
2番パー4の第2打は、ピンそばにつける好ショット。意地のバーディーを奪ってみせた。1つ落として迎えた6番パー4。約3メートルのバーディーパットを沈め、ギャラリーも大声援で盛り立てた。前半はイーブンで回ったが、もう予選通過は絶望的。後半は猛烈な雨を受けたが、ギャラリーはずぶ濡れになってもついてきた。
17番は約4メートルのパーパット。カップの縁で止まりかけたが、最後の一転がりで吸い込まれた。ボミは左手で口を覆いながらビックリ。最終18番は10メートルほどのバーディーパットがカップの縁へ。涙を流すギャラリーも。パーで締め、両手を挙げて拍手に応えた。最後は笑顔だった。
グリーン周りには金田久美子、渡邉彩香、辻梨恵らプロ仲間が集まり、脇元華は涙。懸命に戦い抜いた最後の18ホール。温かい愛の詰まった拍手を全身で受け止めた。
韓国ツアーの賞金女王として2010年に日本ツアー予選会を受け、11年開幕戦から参戦。15年に7勝で国内男女両ツアー史上最高賞金額(2億3049万7057円)を稼ぎ、翌16年まで2年連続賞金女王に輝いた。日本ツアー通算21勝、プロ通算28勝を誇る35歳。今週は、賞金女王になった時代を支えた日本歴代最多40勝の清水重憲キャディーと再びタッグを結成した。
ホステスプロとして慣れ親しんだ所属先のホームコースが日本最終戦。今季は出場7試合で予選通過はなく、最後の通過は33位だった昨年のこの大会だった。当面はゴルフから離れるが、永久シードを持つ韓国ツアーでは「試合が恋しくなったら」と出場する可能性もあるという。
ラウンドの会見の主な一問一答は以下の通り。
――日本最後のラウンドが終了。
「本当に幸せです。本当に今日はいいゴルフができた。今日は私のスイングの問題がわかったので、14番くらいで明日もプレーしたいと思った。でも、3人で楽しいゴルフができた」
――スタート前から涙。
「日本で13年間ゴルフをしたけど、(顔見知りの)小さい子が中学生になってゴルフをしている途中。私が辞めることが悲しいのか、泣いていたので私も泣きました。最初に会った時は7歳くらい。今は中学で凄くゴルフを楽しんでいる。その顔を見て泣きました。今日は手紙を書いていた。あの子たちは私が元気になるように私を応援してくれたし、私もあの子たちを応援したし、あの子たちがいたから私もいい人になりたかった」
――最後は何を考えながらのラウンドか。
「今日もスイングのこと。今は肩が回らないとダメと思って体が横ぶり。昨日、さくちゃん(小祝)と回ったら体のコアの力を使っている。私は今は全部上半身だけ、手だけで難しい。今日はおなかとお尻に力を入れるといい球が出たので嬉しかった」
――清水キャディーとは。
「ありがとうございましたって言えなかった(笑)。すぐに会見に来たので。久しぶりに一緒にやったけど、家族みたいですね。久しぶりでも距離感がない。一週間、私の調子が悪くても良いメッセージをくれた。クラブ選択、ラインの読みも私が楽しめるように。最後のゴルフが楽しかったです」
――ギャラリーもたくさんいた。
「こういう環境で回ることはもうない。ずっとみなさんの顔を見ながら回りました。『イ・ボミ ありがとう』と書いたタオルがいっぱい。最後まで集中できたので力になった」
――18番の第1打のあとに深呼吸。
「うまく終わった~って。セカンドがうまくいいところに行ったので、ずっとずっとこの18番のティーショット、アイアンショット、パットを忘れられないよう、私はいい選手だったと思えるようにしっかりした気持ちでやりました」
――17番はナイスパー。パットがなんとか入った。
「打った瞬間は弱いと思ったけど、ポロンと入った。最近は蹴られることが多かったけど、コロンと入って嬉しかった」
――上田、小祝もピンクのウェアで合わせていた。
「私のイメージがピンクでそれに合わせてくれてビックリ。2人とも似合っていたし、私のことを好きでいてくれて本当に嬉しい。2人のプレーを見て本当に尊敬しているし、一緒に回って忘れない最高のプレーを頭に残せてよかった」
――今日の72について。
「なぜ、昨日はあんなスコアだったのか(笑)」
――2番はベタピン。
「これが私のアイアンショット。ピンまで158ヤード、9アイアンの距離でした。スイングが小さくても回る。今日はおなかに力を入れるといいボールがいった」
――13年前に米国ではなく、日本を選んだ理由。
「凄く迷った。韓国選手は米国に行くのが夢。私も賞金女王なので順番的にはそうなると思ったけど、移動距離がしんどかったし、英語もできないし、家族も韓国にいるので。米国に行くとお母さんが寂しいかなと。横峯さくらさんが2オンにトライするところを見て、凄くカッコよくて私も日本でプレーしたいと。お母さんに親孝行しないといけないと思っていた」
――夫イ・ワンには。
「付き合ってずっといいゴルフができなかった。優勝して嬉しい気持ちを伝えたかった。できなかったのは残念ですが、本当に彼のおかげ。ゴルフをやめたいと思っていた時もあったけど、お母さんと一緒に応援してくれた」
――何したいことは。
「朝起きるのがしんどい(笑)。ゆっくり寝たいですね(笑)。今はゴルフの試合が恋しくなっている。そう思うと思わなかった。最後に上位で回ることを想像していた。結果は違うけど、私の心は幸せ。想像と違ってビックリです」
――やり残したことは。
「日本ツアー21勝で韓国の永久シードをもらった。30勝を目指せなかったこと。21勝してからツアー選手の生活がしんどかった。もうちょっとあの時、体をうまくつくった方がよかったと思います。ノリさん(清水キャディー)とやっていて、もうちょっと長くできたんじゃないか」
――14年に父が死去。その後に賞金女王になり、一番活躍する姿を見せられなかった。
「昨日、私の(会場にある)特設ブースを見て、ホールインワンって書いてあった。そこが父の亡くなった週。またお父さんに力を伝えることができたと思う。当時は(急逝で)試合の途中で帰ってしまったので、それを思い出した。お父さんは『お疲れ様』って言ってくれると思う。(涙を拭い)感謝しています」
(THE ANSWER編集部)