井上尚弥を怒らせるのは逆効果 フルトン陣営は不正を疑うも…怒りを買った歴代王者の残酷な結末
井上は過去の試合でも相手陣営からグラブに疑い
会見後に取材に応じた陣営の大橋秀行会長は「意味がわからない。井上は今までこれで世界戦を19回やってきました。言われたことは一度もないし、何を言っているのかわかりません」と首を傾げた。陽動作戦の可能性については「いいんじゃないですか。本番で勝てばいいでしょう」と一蹴。「それほど警戒しているのでは。こちらは試合だけに集中します」と受け流した。
井上は過去にも対戦相手からグラブについて疑いを持たれたことがある。2014年12月にWBO世界スーパーフライ級王者オマール・ナルバエス(アルゼンチン)に挑戦。フライ級王座V16、スーパーフライ級王座V11中だった相手から初回に2度ダウンを奪い、2回KO勝ちを収めた。ダウン経験のない相手を瞬殺。2階級制覇を達成したが、試合後に相手陣営からグラブチェックを求められた。
もちろん不正はない。さらに昨年6月のドネア戦直前にも、ドネアの妻・レイチェルマネージャーから抗議。井上のグラブが開封済みの箱から取り出されたため、新しいグラブに交換することになった。要求に従った井上は2回TKO勝ちの圧勝。不正を疑いたくなるほどの爆発的パンチなのだ。
どの世界戦でもバンテージを巻けば相手陣営がチェックするのが通例。再び巻き直して不正をしないよう、布にサインまでする。しかし、ラヒームトレーナーは「どちらかが有利になってはいけない。パンパンのグラブで試合をするのは公平ではない」と強調。14日の公開練習でも異例の2分半で終えるなど、何かと揺さぶりをかけている。それほど対処しなければ井上を倒せないのかもしれない。
井上はバンタム級王座に挑戦した2018年5月以来、5年2か月ぶりの挑戦者。チームTシャツは挑戦者カラーの青にし、この日も青と黒のジャージで登場した。昨年12月に世界バンタム級の4団体を統一した記念として、WBOのフランシスコ・バルカルセル会長からWBO統一ベルトが手渡された。
「この試合を楽しみにしてくれているファンの方へ、最高の結果を出して、最高の試合内容でチャンピオンになる姿を見せるので楽しみにしていてください。スーパーバンタム級でもやれるんだと証明したいし、今、スーパーバンタム級で一番強い王者はフルトン。このチャンピオンに勝てればスーパーバンタム級でNo.1だと証明できると思う」
2018年5月、WBA世界バンタム級王者ジェイミー・マクドネル(英国)は減量苦で前日計量に1時間10分遅刻。モンスターの怒りを買い、残酷にも112秒TKOで沈められた。新階級で凄まじい気合いを入れて調整してきた井上。安易な揺さぶりが効くはずがない。むしろ火に油を注ぐだけの逆効果だ。
(THE ANSWER編集部・浜田 洋平 / Yohei Hamada)