井上尚弥の「4団体統一戦」は何が凄い? 30年前は誰も信じなかった世界初の大偉業
ファイトマネーや開催地もネック、軽量級では難しい実現性
また、王者同士の戦いでは敗戦のリスクが高く、対戦を避ける選手、プロモーターもいるため、交渉がまとまりづらい。ファイトマネーや開催地がネックになることも。大橋秀行会長によると、バトラー戦は敵地の英国、第3国の中東開催の話も浮上するなど、難しさがあったという。
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さらに世界的に人気の高い中量級、重量級なら対戦の機運が高まり、4団体統一戦は比較的実現しやすい。4団体統一王者が生まれた中でこれまで最も低い階級は、バンタム級より4つ重いライト級。軽量級では興行面でも実現性に難しさがあり、井上が達成すれば軽量級初、アジア人初の偉業となる。
井上は2018年5月のジェイミー・マクドネル戦でバンタム級デビュー。WBA王座を奪うと、19年5月にエマヌエル・ロドリゲスからIBF王座を奪取した。今年6月にはノニト・ドネアからWBC王座を奪取。過去8人の4団体統一王者は1試合で一気に2つ以上のベルトを奪った試合、世界ランカー同士の王座決定戦で勝った試合、判定勝ちも含まれる。井上のように「4人の王者から1本ずつ奪取」「4本全てKO奪取」となれば、ともに世界初の大偉業だ。
井上は今年6月、世界で最も権威ある米専門誌「ザ・リング」のパウンド・フォー・パウンド(PFP)で1位に選出された。全17階級で体重差がなかったことを想定した現役最強ボクサーを決める格付けランク。日本人初の歴史的快挙を達成し、大橋会長は心境を明かしていた。
「PFP1位になった時、凄く興奮したというか、感動しました。不思議な気持ちです。自分は小学生の時に具志堅さんに憧れて(1990年2月に)世界王者になりました。当時は日本人が世界挑戦で21連敗中。(井上の偉業は)信じられないです。もしかしたら、30年後は世界ヘビー級王者が出ているかもしれないですね」
4つ全てのベルトを統一すれば、海外では「Undisputed Champion(議論の余地のない王者)」と呼ばれ、王者が乱立する現代ボクシングの中で真の階級No.1とされる。井上の拳には、30年前は想像すらしなかった日本人の夢が込められているのだ。
(THE ANSWER編集部)