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日本敗退の朝「忘れんよね、今回のW杯はね」 久保竜彦は呟いた、瀬戸内海の風に吹かれて

11月に編集部を訪れ、ニヒルに撮影に応じた久保竜彦【写真:荒川祐史】
11月に編集部を訪れ、ニヒルに撮影に応じた久保竜彦【写真:荒川祐史】

前田のゴールに重ねた自らの姿「子供の頃の点決めた時を思い出したりしたよね」

 スペイン戦に続いて「おっさん」の食堂に出向き、試合を見た。

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「右サイドは雰囲気あったし、精度も高い。20分くらいには、これはセンタリングから入るわと思ったわ。(相手守備の)ひと山を越えて。絶対来ると」

 前半43分。言葉通り、右からひと山越えたクロスがこぼれ、前田が左足一閃。

「あと何点入るかと思って見よったけどな……」

 見立てとは裏腹に決め手を欠く展開。逆に、後半10分、クロアチアに試合を振り出しに戻された。

 そして、120分でも決着はつかず、PK戦へ。

 1人目南野、2人目三笘が失敗。クロアチアも3人目が失敗。「もう一個(流れが)来る」。そう思ったが、しかし――。

 酒を1滴も飲まずに見守った午前3時近くのテレビには、慟哭する青のユニホームが映っていた。

「ああ、終わったなって。すぐ寝たわ」

 電話口を、また一段と強い風が叩いた。

 終焉を迎えた森保ジャパンの旅路。久保の心が揺さぶられた場面があった。

「前田の喜び方を見てね。ファンになったよね、前田の。子供みたいに喜びよったよな。見た目は黙々とやるタイプと思ったけど、あの喜び方を見て、自分と重なるっちゅうか。子供の頃の点決めた時のあれを思い出したよね。夢というか、憧れで目指してやってきたところで点を決めた時って、あんな風になるんかなと」

 ほかならぬ、久保もW杯に焦がれたサッカー少年だった。

 福岡・筑前町出身。マラドーナに憧れ、得意の左足を磨き、Jリーガーになった。ジーコジャパンでは日本人離れした身体能力で得点を量産。誰もがW杯で世界との真剣勝負を夢見た。しかし、膝、腰と度重なる怪我でコンディションが上がらず。06年ドイツW杯、当落線上で涙を呑んだ。

 落選した日の夜。1年半やめていたアルコールに手をつけ、記憶がなくなるほど酒に溺れた。でも、今も記憶にこびりついて忘れられないことがある。落選直後、テレビの取材を受け、泣いている母を初めて見た。「人に優しくじゃないけど、もう、かあちゃんを泣かせるようなことしちゃいかんとは思ったよね」

 あれから16年。自身の人生の岐路になったW杯で躍動した、所属先も知らない一人のストライカーに自分が重なった。

「久しぶりにサッカー見たけど、やっぱW杯すげえなって。見てて面白いし、本気の度合いはみんな見てて分かるし、Jリーグとは違う。それだけ選手が懸けてるんよな。ちっちゃい頃から憧れて、W杯の試合を見て、サッカーを始める。で、頑張る選手が残って、そういう選手が見られるわけだから。そりゃあ、面白いよね」

 そんな話を聞きながら、合わせて実施したインタビュー。PK戦に見た日本の課題から、4年後の期待まで独自の視点で語ってくれた。

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