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日本敗退の朝「忘れんよね、今回のW杯はね」 久保竜彦は呟いた、瀬戸内海の風に吹かれて

サッカーのカタール・ワールドカップ(W杯)は5日(日本時間6日)、決勝トーナメント1回戦で日本はクロアチアと1-1で突入した延長戦で決着つかず、PK戦の末に1-3で敗れた。前半43分にFW前田大然のゴールで先制したものの、後半10分に失点。史上初のベスト8はならなかった。元日本代表FW久保竜彦は「THE ANSWER」の電話取材に応じ、自宅のある山口・光市で観戦した試合を回顧。その後、仕事場のある瀬戸内海に浮かぶ小さな島から無念の胸中を語った。(文=THE ANSWER編集部・神原 英彰)

クロアチアにPK戦の末敗れた日本代表【写真:ロイター】
クロアチアにPK戦の末敗れた日本代表【写真:ロイター】

日本―クロアチア戦を山口・光市にある「おっさん」の食堂で観戦

 サッカーのカタール・ワールドカップ(W杯)は5日(日本時間6日)、決勝トーナメント1回戦で日本はクロアチアと1-1で突入した延長戦で決着つかず、PK戦の末に1-3で敗れた。前半43分にFW前田大然のゴールで先制したものの、後半10分に失点。史上初のベスト8はならなかった。元日本代表FW久保竜彦は「THE ANSWER」の電話取材に応じ、自宅のある山口・光市で観戦した試合を回顧。その後、仕事場のある瀬戸内海に浮かぶ小さな島から無念の胸中を語った。(文=THE ANSWER編集部・神原 英彰)

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 ◇ ◇ ◇

 日本を涙に染めた深夜からほどなく、ドラゴンは海を渡っていた。「おお。今、島におるんよ」

 クロアチア戦の感想を問うと、ひどく落胆した様子が電話口から伝わってくる。

「ねえ、もう……」

 そう言うと30秒、言葉が途切れた。強い海風がノイズとなり、久保の沈黙を遮った――。

 引退後、山口・光市に移り住んだ。趣味は釣りと酒。サッカーのイベントの顔を出すことはあるが、試合はたまに見る程度。家にテレビはない。冬、娘が「寒い」と言えば、暖房を入れるより「そこらへん、走ってきたらあったまるやろ」と言って育てた。自然を愛し、自然と生きる。

 その独自の感性をW杯の舞台で輝かせたい。東京・中目黒にある編集部でグループリーグの観戦と解説を依頼。快諾をもらった。極上のドラゴン節を引き出すべく、酒を用意。まるで居酒屋のサッカー好きのように語る言葉と様子は、サッカーファンの間でひそかに話題になっている。

 23日、ドイツ戦。

 ゴールが決まると「これが一張羅よ」というジャージのポケットからガラケーが落っこちるほど、興奮した。歓喜の缶ビール350ml×3本。「朝まで飲まんといけんね。こんなことないでしょ、人生で。だってドイツよ、相手。ドイツ」

 27日、コスタリカ戦。

「また一緒に観ようや」。本来は電話取材の予定だったが、久保の希望で再度来訪した。よもやの劣勢。冬なのに履いてきたビーチサンダルを脱ぎ、足を投げ出した。失意の缶ビール350ml×6本。「勝って、朝まで飲みたかったな」

 そして、1日、スペイン戦。

 近所の「おっさん」が営んでいる食堂でテレビ観戦。今大会初のアルコール抜きで見守った運命の90分は、再び歓喜の結末に。朝を迎えた電話取材。「今から仕事、行きよるんよ。元気もらったよ。寝ずに3日間くらい仕事できるわ」

 あれから4日。約束の午前10時。

 今大会最後となった電話に、久保は5コールで出た。 

 長い沈黙。「しゃあないよね」。ボソリとつぶやいた。島の空は、鉛色をしていた。

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