スペイン代表の知っておきたい6つのこと 東京&パリ五輪世代から13人選出【サッカーW杯】
サッカーのワールドカップ(W杯)カタール大会は現地11月20日に開幕する。日本代表戦を楽しむための対戦国基本情報を「知っておきたい6つのこと」と題して紹介する。今回は、U-24日本代表が昨夏の東京五輪準決勝で延長戦の末敗れるなど、何かと縁の深い欧州の強豪スペイン代表の基礎知識をお届けしよう。
サッカーのワールドカップ(W杯)カタール大会は現地11月20日に開幕する。7大会連続出場となる日本代表は森保一監督のもと、過去最高成績のベスト16超えを目指し、4年に1度の大舞台に挑む。
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32か国で争われる今大会。グループリーグでは、1グループに4か国が振り分けられ、総当たり戦で勝ち点の上位2か国が決勝トーナメントに進出。日本はグループEでドイツ、コスタリカ、スペインと同組に入った。ここでは、日本代表戦を楽しむための対戦国基本情報を「知っておきたい6つのこと」と題して紹介。今回は、U-24日本代表が昨夏の東京五輪準決勝で延長戦の末敗れるなど、何かと縁の深い欧州の強豪スペイン代表の基礎知識をお届けしよう。
【コスタリカ代表の「知っておきたい6つのこと」はこちらから】
【ドイツ代表の「知っておきたい6つのこと」はこちらから】
【グループEの日程、順位表はこちら】
スペイン代表の招集メンバー
GK | |
---|---|
ウナイ・シモン | アスレティック・ビルバオ |
ロベルト・サンチェス | ブライトン |
ダビド・ラヤ | ブレントフォード |
DF | |
パウ・トーレス | ビジャレアル |
アイメリク・ラポルテ | マンチェスター・シティ |
ホセ・ルイス・ガヤ | バレンシア |
ジョルディ・アルバ | バルセロナ |
エリック・ガルシア | バルセロナ |
セサル・アスピリクエタ | チェルシー |
ダニエル・カルバハル | レアル・マドリード |
ウーゴ・ギジャモン | バレンシア |
MF | |
セルヒオ・ブスケッツ | バルセロナ |
ロドリ | マンチェスター・シティ |
ペドリ | バルセロナ |
ガビ | バルセロナ |
コケ | アトレティコ・マドリード |
カルロス・ソレール | PSG |
マルコス・ジョレンテ | アトレティコ・マドリード |
FW | |
ダニ・オルモ | RBライプツィヒ |
パブロ・サラビア | PSG |
ニコ・ウィリアムズ | アスレティック・ビルバオ |
マルコ・アセンシオ | レアル・マドリード |
アルバロ・モラタ | アトレティコ・マドリード |
ジェレミー・ピノ | ビジャレアル |
フェラン・トーレス | バルセロナ |
アンス・ファティ | バルセロナ |
スペイン代表の注目選手
■アルバロ・モラタ(FW/アトレティコ・マドリード/30歳)
昨夏のEUROでは決定機を決めきれず批判も浴びたが、現代表ではセンターフォワードの軸となる存在。レアル・マドリードの下部組織で育ち、20代前半でユベントスへ移籍して頭角を表すと、その後はチェルシーでもプレーするなど名門を渡り歩いてきた。2018年ロシア大会では登録メンバーから落選しており、今回がW杯初出場となる。妻はイタリア人モデルのアリス・カンペロで、お互いのSNSに投稿される仲睦まじい写真は海外メディアでも話題になる。
■セルヒオ・ブスケッツ(MF/バルセロナ/34歳)
34歳となった今も中盤で絶大な存在感を放つ司令塔。卓越した戦術眼を備え、長短の正確なパスと的確なポジショニングで攻守の舵取り役となる。スペイン代表の黄金期だった2010年W杯と12年EUROの優勝を知る数少ないメンバーで、経験豊富なキャプテンとしてチームの精神的支柱を担う。W杯での浮沈のカギを握る1人だ。
■ペドリ(MF/バルセロナ/19歳)
「イニエスタの後継者」と呼ばれるスペインの至宝。17歳で名門バルセロナへ完全移籍すると、傑出した技術と状況判断の高さを見せて瞬く間に主力に定着した。18歳でA代表デビュー後、昨夏のEUROに同国代表史上最年少出場。大会の最優秀若手選手にも選出された。さらにU-24スペイン代表の一員として東京五輪にも参戦し、銀メダルを獲得。選手村ではチームメートとサイクリングを楽しんだり、卓球選手を相手に見事な腕前を披露して話題となった。
■エリック・ガルシア(DF/バルセロナ/21歳)
バルセロナとスペイン代表の未来を担う若きセンターバック。ユース時代から将来を嘱望され、16歳でマンチェスター・シティに移籍すると、名将ジョゼップ・グアルディオラに評価され出場機会を増やした。21年夏にバルサへ帰還すると、直後のEURO、東京五輪の代表メンバーに選出。五輪開幕直前に神戸で行われたU-24日本代表との親善試合では、バルサ下部組織で共闘した久保建英とマッチアップし、試合後に健闘を讃え合っていた。
スペイン代表の監督
■ルイス・エンリケ(52歳)
現役時代は中盤のダイナモとして闘志あふれるプレーを見せ、W杯には1994年から3大会連続出場。94年アメリカ大会の準々決勝では、イタリア代表マウロ・タソッティの肘打ちを受けて顔面から流血した。96年にはレアル・マドリードから、宿敵バルセロナへ“禁断の移籍”をしたことでも話題に。引退後は指導者の道に進み、ローマ、セルタ、バルサを率いた後、18年7月にスペイン代表監督に就任。19年には当時9歳の愛娘が骨肉腫により他界する悲しい出来事があり、一時代表監督の座を離れていたが、その後再任。昨夏のEUROでベスト4に導くなど、確固たる信念で母国を率いる。
スペインの概要
スペイン王国
人口:約4,708万人(2020年1月)
面積:50万6,000平方キロメートル
首都:マドリード
言語:スペイン語
日本の総人口は約1億2507万人(2022年5月、総務省)、面積は約37万8,000平方キロメートル。
(参照:外務省公式サイト)
スペイン代表チームの歴史
「無敵艦隊」の愛称で知られる強豪国だが、かつては1964年に欧州王者となって以降は大舞台で勝負弱さを露呈することが多く、W杯でもベスト8止まりの時代が長く続いた。その流れが大きく変わったのは2006年、ルイス・アラゴネス監督が就任し、“ティキ・タカ”と呼ばれるショートパス主体のスタイルを確立。シャビ・エルナンデス、アンドレス・イニエスタら才能豊かなタレントにも恵まれ、黄金時代の幕が上がる。
08年に開催されたEUROで44年ぶりの優勝を果たすと、後任のビセンテ・デル・ボスケ監督も“ティキ・タカ”を継承。10年南アフリカW杯では初戦でスイスに敗れるものの、その後勢いに乗り、決勝ではオランダを延長戦の末に撃破し悲願のW杯初制覇を果たした。
さらに世界王者として臨んだ12年EUROでも頂点に駆け上がり、史上初の大会連覇、メジャー大会3連覇という前人未到の偉業を達成。14年W杯でグループリーグ敗退を喫し黄金時代は終焉を迎えたが、才能豊かな若きタレントが次々に台頭する伝統は変わっていない。
スペイン代表の歴代の名選手
伝説的な名手として常に名前が上がるのが、1953年から名門レアル・マドリードでプレーし、欧州チャンピオンズカップ(現在のUEFAチャンピオンズリーグ)5連覇などに貢献したアルフレッド・ディ・ステファノだ。アルゼンチン出身だが、57年以降はスペイン代表としてプレー。W杯には出場できなかったものの、“王様”ペレらとも並び称される偉大な選手だった。
レアルの英雄で、1980年代のスペインを代表する名手だったのがエミリオ・ブトラゲーニョ。スピードと決定力を備えたアタッカーで、数々のタイトル獲得に貢献。スペイン代表として86年メキシコ大会、90年イタリア大会と2度のW杯に出場している。
ブトラゲーニョと入れ替わるように、レアルの下部組織から台頭したのがラウール・ゴンサレスだ。94年に17歳でトップデビューを果たすと、センスを感じるボールタッチでゴールを量産し、数々の得点記録を塗り替えた。W杯には98年から3大会連続、EUROにも2000年と04年の2大会に出場しているが、母国の黄金期を前にベスト8の壁を突破できず。ただラウール個人としては102試合44得点の記録を残し、スペイン代表の歴代得点ランキングで2位の成績を残している。
そして2000年代後半から始まった黄金期では、数々の名手が躍動。前述したシャビ、イニエスタはもちろん、歴代最多59ゴールを記録したダビド・ビジャ、守備の要として活躍したカルレス・プジョル、守護神イケル・カシージャスらが一時代を築いた。
スペインと日本サッカーの関係
Jリーグでこれまでプレーしたスペイン国籍の選手は総勢30人(参照:Jリーグ公式サイト)。特に近年は2018年のアンドレス・イニエスタ(→ヴィッセル神戸)、フェルナンド・トーレス(→サガン鳥栖)の来日を契機に、19年のダビド・ビジャ(→神戸)、21年のボージャン・クルキッチ(→神戸)など欧州トップレベルで活躍した選手の加入が相次いでいる。
そんなJリーグにおける“スペイン人助っ人”ブームだが、1990年代後半にも一度起きている。97年に元スペイン代表で、“チキ”の愛称で親しまれたアイトール・ベギリスタインが浦和レッズに加入し、3シーズンにわたってプレー。同じ年には横浜マリノス(当時)を率いていたスペイン人監督ハビエル・アスカルゴルタに誘われる形で、W杯に3度出場したFWフリオ・サリナスが加入した。在籍2年でゴールを量産し、J1最長となる8試合連続得点も記録。98年にはバルセロナやアメリカW杯をともに戦ったヨン・アンドニ・ゴイコエチェアと、横浜の地で再共闘を果たした。
また2010年に日本サッカー協会がスペインサッカー連盟と「パートナーシップ協定」を結ぶなど、近年は育成年代での交流も活発だ。才能豊かな日本人選手が海を渡るケースも増え、11年から15年まで名門バルセロナの下部組織に在籍した久保建英は、日本でのプロデビュー後、19年から再びスペインでプレー。リーガ・エスパニョーラのピッチで、少年時代のチームメートだったDFエリック・ガルシアやFWアンス・ファティ(ともにバルセロナ)と再会している。
そして9歳からレアル・マドリードの下部組織に在籍する中井卓大は、今季からBチームにあたるカスティージャに所属。夢のトップ昇格へ、あと一歩に迫っている。
かつて日本人選手にとっての「鬼門」と呼ばれ、元日本代表の城彰二や中村俊輔、大久保嘉人らも苦しんだスペインのリーガ・エスパニョーラ。15年から6シーズンにわたってエイバルなどで活躍した乾貴士、そして久保や中井という育成年代からステップアップする才能の出現により、時代は少しずつ変わってきている。
スペイン代表と日本代表の過去の対戦
両国がこれまで国際Aマッチで対戦したのは、長い歴史の中で1度のみだ(参照:『The Yearbook of JFA 2021』)。それは日韓W杯前年の2001年4月25日、コルドバで行われた親善試合。フィリップ・トルシエ監督率いる日本代表は、その試合の約1か月前、アウェーでフランスに0-5と大敗する“サンドニ・ショック”を経験していた。
1年後に迫った日韓W杯に向けて、2戦連続で無様な姿は見せられない――。結果を優先したトルシエ監督は守備的な布陣を選択。一方的な展開のなかでGK川口能活が奮闘したものの、最終的に0-1で敗れている。
A代表ではなくU-24代表だが、昨夏の東京五輪準決勝でメダル獲得を懸けて激突した一戦は記憶に新しい。日本は粘り強く戦ったものの、延長戦でマルコ・アセンシオにゴールを奪われ、決勝進出を逃した。
(THE ANSWER編集部)