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たった「0.17点差」で五輪を逃した中野友加里 3年間引きずった2009年12月27日の記憶【THE ANSWER Best of 2021】

東京五輪の開催で盛り上がった2021年のスポーツ界。「THE ANSWER」は多くのアスリートや関係者らを取材し、記事を配信したが、その中から特に反響を集めた人気コンテンツを厳選。「THE ANSWER the Best Stories of 2021」と題し、改めて掲載する。今回は「THE ANSWER」スペシャリストの一人を務める元フィギュアスケート選手の中野友加里さんが登場する。

あれから11年、36歳になった中野友加里さんにとってあの経験は今にどう生きているのか【写真:荒川祐史】
あれから11年、36歳になった中野友加里さんにとってあの経験は今にどう生きているのか【写真:荒川祐史】

「THE ANSWER the Best Stories of 2021」、10月のフィギュアスケート・中野友加里さん

 東京五輪の開催で盛り上がった2021年のスポーツ界。「THE ANSWER」は多くのアスリートや関係者らを取材し、記事を配信したが、その中から特に反響を集めた人気コンテンツを厳選。「THE ANSWER the Best Stories of 2021」と題し、改めて掲載する。今回は「THE ANSWER」スペシャリストの一人を務める元フィギュアスケート選手の中野友加里さんが登場する。

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 テーマは「中野友加里とオリンピック」前編。2022年北京五輪が控えるフィギュアスケート界。今日23日からは全日本選手権が開幕する。現役時代、バンクーバー五輪代表選考を兼ねた全日本選手権で「0.17点差」で五輪切符を逃した経験を持つ中野さん。当時の舞台裏を明かし、アスリートにとっての五輪挑戦の価値を語る。(取材・文=THE ANSWER編集部・神原 英彰)

 ◇ ◇ ◇

 中野友加里というスケーターのキャリアで語り継がれる大会の一つは、あの冬の大阪だろう。

 2009年12月、全日本選手権。翌年2月に迫ったバンクーバー五輪の代表選考を兼ねた大舞台は、スポーツ界の注目の的になっていた。GPファイナル2位に入っていた安藤美姫がすでに代表当確。3枠あるうちの残り2枠を浅田真央、鈴木明子らと争う構図だった。

 フジテレビに就職が内定し、このシーズン限りで引退することが決まっていた中野さん。しかし、フリーの後に行われた表彰台で立っていたのは「3」と書かれた場所だった。1位の浅田、2位の鈴木が代表内定し、3位の中野さんは落選。2位との差はわずか「0.17」――。

「0.17点差でも0.01点差でも(2位が)上。状況を考えても『ああ、これで終わったな』と。どうやって親に顔を見せよう、なんて話せばいいんだろう、謝った方がいいのかな、辞めると伝えた方がいいのかな……。いろんなことが頭の中を駆け巡り、ずっと泣いていました」

 五輪を「人生の目標だった」と表現する。

「その時、私にはスケートしかなかったので。『スケート人生』から『スケート』という文字を取ってしまってもいいくらい“人生そのものとしての目標”でした」。憧れが芽吹いたのは小学生時代。同じリンクで練習していた同郷の伊藤みどりの姿を見て、無垢に信じた。

「大きくなったら、私もきっとオリンピックに出られるんだ」。憧れはキャリアを重ねるごとに、夢としてくっきりと輪郭を帯びた。競技人生でチャンスがあったのは2度。1度目は2006年トリノ五輪。20歳で2005年のGPシリーズNHK杯優勝。GPファイナル3位に入り、スポットライトを浴びた。

「当時は五輪代表候補という立ち位置でもありませんでした。周りの選手からすれば『あら、あなたいたの?』くらい。でも、とんとん拍子に結果を残せたし、自分にとっての目標は五輪だったので、出られるものなら出たいと思い、近い存在になってきたシーズンでした」

 全日本選手権は5位に終わり、五輪代表を逃したものの、トリノ五輪直後の世界選手権代表に選出された。この年から3年連続で代表を掴み、5位、5位、4位とトップ5に入ったほか、冬季アジア大会優勝、全日本選手権2年連続表彰台など着実に実績を積み、トップ選手の仲間入り。そして、24歳となったバンクーバー五輪シーズン。GPシリーズ2戦(3、4位)を経て迎えたのが、全日本選手権だった。

 大阪・門真、なみはやドーム。五輪切符を巡る日本フィギュアスケート史上屈指の激戦は、この舞台で繰り広げられた。

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